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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第13章 輪廻




食器はそれぞれが一つずつ、
キッチンの作業台の上にそのまま置かれ、
テーブルも、鏡台も、暖房器具も
見事なほどに無い。

なんとなく押し入れを開けたが、
やっぱりカラだった。

「…睦、お前布団はよ?」

「ふ、とん…」

未だにボーっとしながら、
それでも理解はできているようで、
力無く、あのタオルケットを指差した。

…アレで、寝てたのか…?
この寒いのに。

何だこの生活は。
あまりにひどくて、俺は言葉を失った。

睦が取ってきたものは、
サイフと、スマホ、充電器だけだった。
サコッシュひとつで移住…

こんな事を思うのは失礼だとわかっていながら、
可哀想…
そんな言葉が頭をよぎる。

抱きしめてやりたいのをぐっと我慢した。
ここで、じゃなくて
俺の部屋についたらそうしてやりたかった。
その方が、安心して泣けるだろう。
この場所は、あんまりツラすぎる。

俺は睦の手を力いっぱい握ると、
その部屋を後にした。











俺は気ばかり焦り、
睦の手をぐいぐい引いて
足早にここまで来た。
歩幅の事なんか、何にも考えずに歩いて来たから、
睦は何も言わなかったが
実は大変だったと思う。

部屋にたどり着いた途端に、
俺は睦を抱きしめた。
言いたい事も、訊きたい事も
山のようにあるが、
そんな事よりも何よりも
睦を抱きしめる事が最優先。

ずっと、1人で戦ってきた睦。
不安だったろう。
怖かったろう。
それなのに、誰にも頼らず
ずっと1人で…。

そんな事ってあるのか。
こんなにたくさん人のいる世の中で、
たった1人きりで、
耐えなくてもいい拷問のような事を強いられて…

「…がんばったな、睦」

そんなことしか言えない自分が恨めしい。
もっと気の利いた事は言えねぇのかよ…。

「ごめんな睦」

力いっぱい抱きしめる俺に、

「…なん、で、謝るの」

震える声で答えてくれる。

「良かった…」

「…なにが…?」

「睦が、話ししてくれて。
嫌われてると思ってた」

「…嫌うわけ、ない。
だって…あなただけが、私の味方でいてくれた…」



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