第13章 輪廻
「な、によアンタ」
つかまれた手を離そうとするその女。
腐っても、睦を産んだ女だ。
落ち着こうとするが、…ムリだ。
睦は、ただ唖然として
大きな瞳で俺を見つめていた。
俺は、その女を睨みつけた。
「……ハジメマシテ。
お取り込み中の所、申し訳ねぇ」
「わ、わかってんなら、消えなさいよ!」
へぇ…この俺によく言い返せたな。
「睦のオカアサンだそうで。
こりゃとんでもねぇオカアサンがいたモンだ」
「…あんた、この子の彼氏なの?
だから仕事辞めたりしたんでしょ!
睦そうなんでしょ⁉︎
あんたのせいか、別れなさいよ!」
それを聞いた睦が、
頭を抱えたのがわかった。
この女のせいか。
コレのために、睦は働いて、
欲しいものも買わず、こんな所に住んで、
…大半の金を、渡していた…。
何だ、この、やり場のねぇ感情。
「こいつを金ヅルにすんのは
今日限りにしてもらえねぇか」
「何言ってんの⁉︎
子供が親の為に働くのは当たり前でしょう⁉︎」
「…てめぇが親だって自覚だけはあるんだな」
「当たり前じゃない!私が産んだのよ」
「産むだけが親じゃねぇ」
「…っ、何よあんた。関係ないでしょ⁉︎
他人が家族の事に首突っ込まないで!」
俺はこの女を殴らねぇ事に集中していた。
そうでないと、殴り飛ばしてしまいそうだ。
「残念だがな、今日から
俺がこいつの家族だ」
睦は、ハッとこちらを見上げた。
「はっ…何を言い出すの…」
明らかに動揺しはじめる女。
「こいつと所帯を持つ。俺が、家族になる」
「ちょっと待ってよ。私そんなの聞いてない…」
「睦は成人してる。
親の許可なんかいらねぇ」
「ゆ、許さないわよ!
睦、ねぇ何とか言ってやってよ…」
「…ぁ…」
震えている睦の頭を撫でてやる。
びくっとこちらを向いて、不安そうにしている。
「睦、大丈夫だ。
部屋に行って、貴重品と、
自分が大切にしてたモンだけ持って来な?」
震えている睦。
…1人じゃ無理か。
「わかった…。待ってろ」
俺はその女に向き直る。
睦の前、女から隠すように立った。