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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第13章 輪廻





ソープで人気を博してた女が住んでいるとは
到底思えないアパート。
周りは繁華街から外れた
街灯の一つもねぇ、淋しい場所。
あいつの稼ぎは、一体どこに消えてんだ…。

そこに呆然と突っ立っている俺の耳に、
けたたましい女の叫び声が聞こえてきた。

「わかってんのよ!いい加減にしなさい!」

静まり返った空間に、
この叫びはいただけない。
アパートに、灯りがついているのは
その女が立っているドアの一部屋だけだ。
他の部屋は空きなのか、
すでに寝ているのか…。

インターホンを鳴らし、ドアを何度も叩く。
…まさか、アレ…。

嫌な予感がよぎった瞬間、
ドアが開き、顔を覗かせたのは…

「いい加減にするのはそっちだよ!
近所迷惑だからもう帰ってよ」

睦…。

「近所迷惑?どうせだーれも住んでないじゃない!
あんただって立ち退き言い渡されてんでしょ?
勝手に出てったら許さないからね!」

40になるかならないか、
その女はやかましく声を張り上げた。

「そんな事よりホラ。今月の分は?」

睦に向かって手を差し出した。

おいおい、まさかと思うが…
ドラマや漫画の世界じゃねぇ。
現実に、あるのか…?
じゃああの女はもしかして…

「お母さん!私、もう前のシゴト辞めたんだよ。
もうそんなお金ないから、自分でちゃんとして!
充分すぎるくらい渡して来たでしょ?」

…!
オカアサン、と言ったのか睦。

「何で辞めたりするのよぉ。
また始めたらいいじゃない!ね?」

「もうしない!お願いだからしっかりして!」

「困るのよ、あんたがいないと。
私これからどうしたらいいの?」

「まだまだ若いんだから、
ちゃんと働いたらいいでしょ?
私の事は自分でするから、…」

「今更もうムリよ。お願い睦、
10万でいいから…!」

「もう無いのよ、お母さん!」

「何よ、この親不孝者‼︎」

その女が片手を振り上げた。
睦は、逃げもせずただ目を閉じていた。

おい、逃げろよ睦!

そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。
振り下ろされたその手を
咄嗟につかんだ。

つかまれた女も、
いつまでもぶたれない睦も
驚いて俺を見上げていた。



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