第13章 輪廻
必要な事以外話さず、
事務的な生活を送る俺を
周りは心配そうに見ていたが、
俺はもうどうでもよかった。
あんな、たった1日しか関わっていない女を
こんなになるまで想い続けるなんて
おかしいと自分でも思う。
でも、違うんだ。
あいつを思うと、世界が変わる。
俺を変えてくれる。
今まで好き放題してきた。
それは、今まであいつが居なかった心の隙間を
埋める為にしてきたように思うんだ。
でも、あいつを失って、
また他の女で埋めようなんて気はもう起きない。
あの時間に、あのコンビニに行っても
あいつはもう姿を現さなかった…。
会えない事がわかっていながら、
俺は今日も、あのコンビニに来てしまった。
6時半を過ぎ、7時、…
8時になっても、やっぱりあいつには会えなかった。
会いに行こうにも、
住んでいる場所なんか知らねぇ。
連絡先も、聞き出してねぇ。
もう、ムリなのか。
そう思った時だ。
「…あの、失礼ですが」
後ろから、声をかけて来た男がいた。
振り返ると、背広姿の恰幅の良い男。
俺より、少し年上くらいに見える。
人の良さそうな笑顔をたたえ、
ペコリと会釈をした。
……誰だ?
「突然すみません。
ちがっていたら大変申し訳ないのですが、」
そう前置きした男は、
「以前、ハルちゃんと一緒におられた方ですか?」
言いにくそうに、信じられない事をいった。
ハル…ハル⁉︎
それは、あいつの…!
「…あぁ」
早鐘を打つ、うるせぇ心臓。
はやる気持ちを抑えつつ、
俺は平静を装って答えた。
「あぁ!やっぱり!よかった、人違いでなくて…」
胸を押さえて、大きなため息をついた。
「…あいつが、何か…?」
こんな時に限って、ポーカーフェイスは崩れがち。
「あぁ、すみません。
ハルちゃん、最近どうですかねぇ?」
頭を掻き掻き、その男は話し出した。
「どう、と言うと…?」
「いえね、ハルちゃんに辞められちゃってから、
彼女に会いたいっていうお客さんが
後を絶たなくて…。こっちとしても
戻って来てくれるとありがたいんですけどねぇ」
へこへこと頭を下げながら
こっちの出方を窺っているようだ。