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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第13章 輪廻





そのおかげで、
生徒にはからかわれるわ
同僚には怒られるわで…早く帰りてぇ…。

そんな調子で長い1日を終わらせ、
俺は帰路に着く。

何か食うモン買ってかねぇと
もし睦がまだうちにいたら、
食糧が足りねぇ。

近くにあるスーパーに寄ろうと
方向を変えた。
通りかかった先に、
もう子どものいなくなった、街灯ひとつの公園。
灯りから隠れるように、暗がりに人影。
ひとつに見えたが、どうやら重なっているだけで
2人いるようだった。
大方、我慢のきかねぇ男女が盛ってんだろ。

呆れて通り過ぎるが…
ふと昨夜のことを思い出し
ヒトの事は言えねぇかとため息をついた。

そしてこの時ほど。自分の地獄耳を
褒めてやりてぇと思ったことはなかった。

聞こえてしまったのだ。

「昨日はハルちゃんに会いに行ったのに…」

そう言った、男の声を。

「ん…ごめんね、私も、淋しかった…ぁ…」

そう言った、女の声も。

聞いたことのある、甘い声。
昨夜、俺の耳元でさんざん喘いだその声。

俺は、かぁっと頭に血が上るのを感じた。

足早に公園を横切り、
人影に歩みよる。

こちらを向いていた男の方が
俺を見て慌て出した。

「な、なんだお前…っ」

「…てめぇに用はねぇ」

自分でも驚くほど、怒気を含んだ声。
抑えが、きかねぇ。

なのに、俺の存在に気づいた睦は、
その男の腕の中から

「あ、おかえりー」

にこやかに言う。
本当に、何でもないことのようにしている。

「お前何してんの」

「何ってー…わかるでしょ?」

「わかってたまるかよ!」

つい声が高くなる。
睦は片耳を塞ぎ、

「イヤー、怒鳴ったこの人。こわい」

そう言ってその男の背に手を回し
そこに顔を埋めた。
その、わざと俺に見せつけるような
仕草に、俺は簡単に胸をざわつかせる。

「…っ‼︎」

俺を。
妬かせる女が現れる日が来るとは、
夢にも思わなかった。



『睦…愛してるよ。大好きだ。
大切に、するからな…』

『うん…私もだいすき。
そばに置いてくれてありがとう』


…そんな会話が頭を掠めた。
俺と、睦の声…?

…何だ。
そんな話し…した事ねぇのに…。






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