第13章 輪廻
「…天元…」
ぱちっとまばたきをして、
睦は俺の目を覗き込む。
「やめ、てね…?そんな事をしたら…」
「大事なオシゴト、出来なくなっちまうなぁ?」
睦は目に涙を溜め、首を横に振る。
そんな睦の服を
脱衣所で脱がしにかかる。
ゆるく抵抗しながら涙をこぼし、
「私を、愛したりしないでね…?
私なんか、ただの欲の処理をするキカイでいいの」
逃げようとする。
「お前何言ってんだ。んなワケねぇだろ!
思い切り愛してやるよ。
…俺に、抱かれてぇだろ…?」
びくっと体を震わせて俺を見上げた。
「…いや…」
怯えたように首を振る。
…そんなにか睦。
何をそんなに怯えているのか。
俺に与えられる快感?
絆されてしまう事?
それとも愛される事?
他の客を、取れなくなりそうだから…?
そうだとすれば、喜んでそうするが…
あんまり怯えたようにこちらを見るから…
「キカイだってんなら、俺をおさめろよ。
それだけで、いいにしてやる」
今の所は譲歩する。
ちょうどフロだ。
睦のお得意とする所だろう。
その夜は、
俺もこいつも
互いの想いに気づいているが
知らないフリをした。
その代わり、
やり場のない想いをごまかすように
俺は睦を抱き続けた。
「だーりぃ……」
洗面所の鏡の前で
独り言と共に大きなため息をついた。
さすがにヤりすぎた。
ここまでひでぇのは初めてだ。
…あいつは、大丈夫だろうか…。
顔を洗い、歯を磨く。
タオルを首にかけ、ズルズルと
ベッドルームに戻った。
カーテンを引いたままの薄暗い部屋。
俺のベッドの上で蹲って眠る睦は
拾ってきた仔猫のようだった。
乱れた髪を手で梳いてやると
うーんと身じろいで、うっすら目を開ける。
「……」
ボーっと空を見つめている睦に
「おはよ」
声をかけたが反応はない。
「…睦?」
名を呼ぶと、びくっと震え、
ぱちっとこちらを見上げた。
「……」
「大丈夫か…?」
さすがにちょっと心配だ。
額にキスを落とすと、ススッと身を引いて
「おは、よ…」
シーツに全身くるまり隠れていく。