第12章 形影一如
おやすみ、と言う言葉は、
こいつを眠らせる為の呪文か何かだっただろうか…
と、本気で考えてしまう程、
睦はものすごい早さで眠りについた。
際限なくこいつを抱き倒す俺を、
一瞬で抑え込んだ。見事だった。
…だっこしてあげるから、は、良かったな。
相変わらずの、子どものような表現。
それが、俺の胸に刺さるんだ。
可愛くて、たまらない。
大人の女なのに、少女のようになる瞬間が
たまらない。
何だろうなぁ、
こいつの、俺の心をつかんで離さねぇのは。
穏やかな寝顔を眺める。
それですら、いつまででも見てられる。
…やっぱどっか、おかしいんだろうか。
規則正しい寝息を聞いていると、
それに流されるように眠気に誘われる。
細い腕で、俺を抱きしめる睦が
心から愛しい。
俺のことを考えてくれて、ありがとうな…。
ほんの少し、睦に擦り寄って、
何よりも愛しい温もりに包まれながら
俺も、目を閉じた……
目を覚ましたのは、
薄明るく辺りを照らす、日の出前の
涼やかな空気の中。
俺を抱きしめていたはずの睦は
いつの間にか、俺の腕の中にいて、
あれ?と、思いながらも
まぁ結局くっついているわけだしいいかと、
しっかりと睦にまきついていた
自分の腕に力を込めた。
相変わらず、ぴくりともせず眠り続ける睦。
まだ早いし、疲れてもいるだろうし、
もう少し寝かせてやろうかと思った時、
ふわりと、微笑んだ。
「……っ」
名前を呼ぼうとして、思い直す。
確かに、眠っているのだ。
——どんな、夢見てる…?
そうっと頬を撫でてやると、
「……ん…」
身じろぎをひとつして、
うっすらと目を開けた。
しまった、起こした。
そうか、夢見てるとわかっていたのに。
まだ寝惚けている可愛い睦をどうしたものか
悩んでいると、ゴシゴシと目を擦り出した。
それでもまだ半分しか開いていない目を
部屋中に巡らせ、ようやく俺を捉えると
さっきと同じ、ふわふわの笑顔を
こちらにむけた。