第12章 形影一如
俺はつい、見惚れてしまって、
見つめて、
しまった。
こんなに、ずっと一緒にいて、
それなのに、こいつの事をもっと知りたい。
お前に、届きたい。
そして、愛しげに、俺にすり寄ってくる。
「…睦?」
起きたのか?
それとも夢の中?
もしくは、夢の続き…?
俺の頬に手を伸ばして捕まえると、
ちゅ、と口づけてくる。
…ねぼけてる?
でも、それにすらつき合ってやろうという気になる。
半分寝ながら、こんな可愛い事をしてくる睦。
こんな女、愛するしかねぇだろ。
俺は何も手を出さず、
睦の好きにさせてやった。
乱れた俺の髪を手櫛で梳いて、
愛しげに目を合わせる。
どこか焦点の合わない目が、
まだ眠っていることを語っていた。
何て幸せな時間。
身にあまるよ睦。
これ以上の想いなんて無いと思っていた。
それなのに、溢れてくるんだ、お前といると。
後から後から…。
尽きない想いを抱えた自分が恐ろしい。
お前を、押しつぶしてしまうんじゃないかと…。
睦からの口づけを受けながら
そんな事を考えていると、
ふと、睦が涙を流している事に気づいた。
指でそっと拭いてやると
ふっと微笑み、
「…気にしないで…?幸せの、涙だから」
はっきりと言った。
……
「睦…お前起きてんのか…」
「…え?…私、起きて、ない…?」
妙な質問で返して来て、俺こそ笑ってしまった。
「寝惚けてんのかと思った」
「最初は、寝惚けてたけど。
もうちゃんと起きてる」
頬にあった手をするりと伸ばし、
首に抱きついてくる。
「起きてんのに、あんな事してたのか…?」
恥ずかしがり屋の睦ちゃんが?
「する。だって、一緒にいられて嬉しいよ。
私だって…浮かれる事くらいあるの」
照れ隠しなのか、
ぎゅうっと俺の首筋に顔を埋めた。
…こいつの仕草が可愛いからなのか、
それとも愛しすぎて何をされても悦ぶのか…
どちらにせよ、こいつはおかしいくらい可愛い。
「そうか…。じゃもっと、してくれ」
「ん…?」
睦はちらりと、こちらを覗き見る。
「…口づけ」
「……」
ポッと頬を染め少し悩む素振りを見せた後、
ひどく照れながら、それでも俺が強請った通り
口づけを繰り返した。