第12章 形影一如
たったそれだけの事で、
この人が幸せになるのなら他の何を差し置いても
そう呼ぼうと思った……のに…そんな彼は
私の上にのしかかり、胸元に顔を埋める。
足を開き、その間に体を滑り込ませ…
「ちょっと宇髄さん!」
咄嗟の事で、呼び方を間違えた私を睨み、
「……おしおき」
中心に、自分の猛りをあてがう。
「うそ!話が違うじゃない!」
…そんなのおしおきにならない!、とは、
言えなかった。恥ずかしすぎて…。
「もう俺、おかしいから。
お前に触れていたくて仕方ねぇ。
頼むから、つきあえ」
頼んでいるくせに、命令するの。
もう、それ以外に道はないと言われたようだ。
「愛してる」
私を押さえ込むための殺し文句。
…そんなことしなくても、
私の答えはわかりきっているのに。
だってこの人には、逆らえないのだから。
彼の首に腕を回し、目を閉じる。
それだけでわかってくれた宇髄さんは
ゆっくりと、私の中に身を沈めて行った。
さんざん満たしたであろう欲は、
ひどく穏やか。
宝物でも扱うような触れ方をされて、
さっき止まったはずの涙が再び溢れ出した。
切なそうな表情を浮かべて、
私の涙を唇で拭ってくれ、
「睦…」
そっと、名を呼んでくれる。
幸せ。
「…こわ、い…」
勝手に震え出す体。
そんな私の髪をかきあげ、微笑んだ。
「…幸せって、コトか…?」
なんて、幸せそうに笑うんだろう。
「幸せ、だと…怖いんだろ…?」
そんな事、よく覚えてるな…。
うん、と頷いて両手を伸ばす。
「俺とこうして、ると、幸せか…?」
「ん…しあわせ…ぁ……だい、すき…」
いつもの、求め合うような激しさはなく、
確かめるように愛されると、
何もかもがどうでもよくなって、
私の意識はこの人だけに向かう。
でも、ある一点を集中して貫かれてしまい、
「あっ…んん…っ」
足の先から頭のてっぺんまで
痺れるような快感が走って、
私はつい逃れようとしてしまった。
だってほんとは、もうとっくに、
限界を超えているんだもの…
これ以上の快楽は、もはや恐怖でしかない。
それもわからなくなる程、
狂わせてくれたらいいのに…。
絶頂が近いのか、少し速まった抽送。
「や、だ……ぃや…っ」
頭を振って、快感から逃げようとする。