第12章 形影一如
お酒……?
私が?
「…のめ、ない…」
何とかそう告げた。
今ここにあるのは、宇髄さんが飲んでいるものだけ。
私は、甘いのしか飲めないから。
でもそんな事、知ってるはずでしょう?
それなのに…
それなのにあんな事を言うワケは…
「俺が飲ませれば、飲めるだろ…」
そう言うことなのだ。
無理矢理にでも飲まそうと言うのだろう。
達したばかりの身体には
抵抗する力なんか入らないし
どうせ抵抗した所で、
この人はしたいようにするだろうし
甘く囁かれれば
さっきみたいに私は狂い出す。
もう、この人の言いなりになるしかないのだ。
お猪口になみなみとお酒を注いで、
それを煽ると唇を寄せてくる。
戸惑いでびくりと体をすくませる私を
長い両腕で引き寄せて、やや強引に口づけた。
遠慮がちに開いた隙間から
口内にチロチロとお酒が流れ込む。
強い香りが鼻に抜けて、
むせてしまいそうになった。
飲み込むことが出来ず、口内に溜まっていく。
私は、小さく首を振って抗議する。
口端から流れていくのに気づいた宇髄さんが、
器用に舌を伸ばして、私の喉を開いた。
無理矢理、流し込まれたお酒が
熱の尻尾を引いて喉奥へと流れて行く。
全てを注ぎ終えた宇髄さんが離れ、
もう一杯、口に含もうとしている姿を見て、
慣れないお酒を飲まされて
くらくらと視界も定まらない中、
それでも
「宇髄さ、も…ムリ…」
何とか口にする。
でも宇髄さんは、
私の言葉なんてまるで聞こえていないかのように
再び私に口づけた。
「んぅ…う…」
流れ込む液体は、やっぱり熱くて、
頭が、麻痺したように働かない…
彼の舌が、唇から頬を舐め、耳にたどり着くと
そこをかぷっと甘噛みされ、
「は、ぁん…っ」
鼻に抜けるような声が勝手にもれた。
私の様子が明らかに変わったのを見て
彼はそれ以上飲ませようとはしなかった。
全身から力が抜けきって、
もう私に残っているのは、
本能と、ほんのちょっぴりの理性だけ。
襟元を緩められても、何も、出来ない。
熱い瞳で見つめられ、
私はどんどんおかしくなっていく。
「睦…俺も、イかせて…?」
首筋にそんな呟きを埋めて、
彼は私からなけなしの理性を奪っていった。