第12章 形影一如
そのうち唇をペロリと舐められて、
びくりと肩をすくませてしまった。
「っ…あ…」
甘噛みされたり、また舐め上げられたり、
緩急をつけて唇を弄ばれて、
私は弱々しく喘いだ。
逃げようにも、この体にはもう力も入らない。
一瞬、口づけが止んで、
私は無意識のうちに閉じていた目を開ける。
すると、色を湛えて潤んだ瞳が
こちらを見下ろしていた。
…そんな目を、しないでほしい。
ただ見つめ合い、またゆらりと近づく。
口づけの予感に、私はまた、目を閉じた。
惚けた唇の隙間から、
無遠慮に侵入して来た舌に、
自分の舌をねっとりと絡め取られ……
…何か…おかしい。
身体がおかしい。
「…っ…ん…ぅ…」
「…ふ、…」
彼も甘い吐息をもらした。
かたかたと震え出した私の身体を
優しい腕が抱え直し、肩から腕を撫で下ろす。
上顎をくすぐるようにそうっと舐められて
いよいよ身体の異変を感じた。
「ん、あぁ…っ」
唇は離れながら、舌を絡められる。
何をされても感じるばかり…
全身が震え出した、この感覚には、
覚えがあった。
きっと、この人もわかってるはず。
だからこんなにしつこく
優しい口づけを繰り返すんだ。
後頭部に手を掛けると、再び唇を
ぐ…っと押しつけられ、吐息ごと奪われて、
頭が、真っ白に…
「っ…っん“ん“んっ…!」
ひどい快感に、暴れ出してしまいそうな身体を
彼が力いっぱい抱きしめてくれる。
ちゅっと、名残惜しげに離れていく唇が、
きれいな弧を描いた。
涙で滲んだ視界、
それでもこの人の表情を捉えようとする私は、
どれだけ彼を想っているのだろう。
必死すぎて、滑稽なほどだ。
「上手に、イけたな…?」
ほら、やっぱり知ってたの。
わかっていて、私をこんなにした。
悔しいな…
肩で息をして、くたっと彼に身を預ける。
「もったいねぇな…
お前のナカに、居たかった」
彼は彼で、悔しそうな声を出した。
そしてよしよしと頭を撫でてくれる。
「それにしてもお前…」
「…?」
ふと目を開ける。
まじまじと私を見つめ、
ふっと、表情を和らげた。
「…可愛すぎ。酒でも飲んだか」
嬉しそうに頬を緩める。
まだぼーっとしたままの私に気づき、
何かを思いついたような顔になる。
「……酒、飲んでみるか?」