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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第12章 形影一如







俺がガラリと戸を開け外へ出ると
睦は浴槽の一番奥まで行き、
縁に手を掛けて
遠く広がる景色を眺めていた。

縦長の露天風呂は、
大きな石で縁取られた歪な楕円形。
そこに温泉特有の濁った湯が
なみなみと湛えられていた。
中程までは屋根があり、
その先はまさに吹きっさらし。

旅館が高台にあるおかげで
眼下に広がる絶景。
山の下に街、街の向こうに海。

かけ湯をした後
湯に入り睦の元まで行く。

「あー…気持ちいいな」

俺に気がつき振り向いた睦は
大はしゃぎで、

「宇髄さん見て!すごい!」

海の方を指差した。
睦を囲うように縁に両手をついて
同じ景色を眺める。
天気は快晴。
視界を遮るものは何もないし、
この開放感は何とも言えず気持ちいい。
時折り吹く風が周りの木々を揺らし
葉擦れの音も耳に心地よかった。

「あぁ、思った以上だ」

「うん!ほんとにお外だね」

オソトって…子どもかよ。
可愛い睦を見てつい笑う。

「キレイなんだけどなぁ…」

「え?だけど?」

睦は不思議そうにこちらを振り返る。

「景色、お気に召しませんか?」

「いーや」

髪が湯に浸からないよう
高く結い上げている睦は
ひどく色っぽいし、
ご機嫌で笑っている様子はとても綺麗なのに
まるで子どものような喋り方をして、
その落差が何とも愛らしい。

綺麗なのに可愛い睦を
背中から抱きしめる。
浴槽の縁に両肘をかけ、外を眺める睦は
俺がくっついても特に気にする様子もなかった。
首だけ振り返り、少しはにかむ程度。

…何だソレ。
調子乗るぞ。

「あ、宇髄さん見て、鳥がいる」

少し抑えた声で、敷地の端を指差した。
そこには腹が赤茶色の小さな鳥。

「可愛いな。鳥さん、来てくれないかな…」

なんて言いながら、腕を伸ばして
まるでその鳥を呼ぶように
敷石を指先でトントンと叩く。

…そんなんで来るのか?と、思っていた所へ
その鳥はスッと羽を開き
睦の前まで飛んできたのだ。

「わ、こんにちは。あなたとってもきれいだね」

嬉しそうに話しかける。

その鳥は首を傾げながら様子を窺い、
そっぽを向いたかと思うと
睦の指の上に両足を乗せた。



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