第12章 形影一如
「緑がきれいだぞ?見てみたくねぇか?」
「…見たい」
「空見上げながらの風呂だぞ?入りたよな?」
「入りたい」
「露天風呂なんて入ったことねぇもんな?」
「うん!」
「一緒に入るか?」
「うん!」
「よし、じゃ行こ」
つかまれたままの腕をぐいっと引っ張り上げられ
部屋の中を横切って行く宇髄さんに連行される。
あれ?
「待って待って?一緒はいいです」
「何で。今、一緒入るっつった」
「言わされたの!」
「いいだろ別に。
そんなにこだわる事がわかんねぇわ」
「そっちこそ。何で1人で入れないの?」
子どもじゃあるまいし。
「あぁ…そういう了見なのか…」
宇髄さんは目を見開いて
合点がいったように数回頷いた。
歩を止めて、体ごとこちらに向き直ると
「あのな、」
と、語り出した。
私もちゃんと聞こうと彼の目を見上げた。
「俺はお前が好きなんだよ。で、
お前も俺が好きだな」
「うん」
よしよし、と頭を撫でられる。
「で、俺もお前も、1人で風呂ぐらい入れるな。
大人だし」
「うん」
当然です。
「でも、その間も離れていたくないわけよ」
「…」
そんなに、長い時間じゃない気がするけど…。
「ゆっくり湯に浸かってる間も、
愛しい女が腕の中に欲しいってこと」
「……うん」
それは、私にとっては悪い事じゃないかも。
可愛がられてる証拠な気がする。
「しかも今日は特別だろ?
一緒に景色見て、共有してぇと思うわけだ」
「うんうん…わかった気がする」
「それはよかった」
宇髄さんは満足そうに笑顔を
作った
……
「…でも」
のに、
私が続けた為に、かくっと首を落とす。
「…でも?」
「ものすごく恥ずかしいので、
先に入ってていいですか?」
そうでないとムリ。
落とした首をもたげ、
「いいぞ」
ホッと息をつく。
「そして先に出て下さい。それなら一緒に行く」
「了解了解。じゃあ先にどうぞ」
上機嫌で、脱衣所の戸を開けてくれる。
宇髄さんに見送られながら
私はそこに入り、
…何となく
ちょろまかされたような気がして首を捻った。