第12章 形影一如
「それ、急にどうして買ったの?」
私は、宇髄さんが手にひっかけている袋を指差した。
「あぁ、大切な人への土産だ」
「大切な…」
考え込んだ私を見て少し笑った。
「お前にとっても、大切な人だぞ?」
「誰…あ、おじちゃん?」
「ご名答」
え⁉︎
「ホントに⁉︎おじちゃんに買ってくれたの?
ありがとう!嬉しい!」
私はつい、人目も憚らず
彼の腕にしがみついてしまった。
だって、おじちゃんのこと考えてくれるなんて
感動モノだ。
私はそろりと腕を解き、
「わたし、申し訳ないくらい何も考えてなかった」
自分の不甲斐なさを恥じた。
「睦は金魚に夢中だったからなぁ」
からかうように笑う宇髄さんは
自然に私の手を取った。
あ…手、繋いでくれるんだ…。
何となくその手に視線を落とす。
その視線に気づいた宇髄さんは
「…気になるか?」
顔だけこちらに向けた。
「…ううん。嬉しい」
私が笑うと、宇髄さんも満足そうに笑った。
「ああ、楽しかった!」
私は旅館の部屋に入った瞬間、
無意識に声を上げた。
あの後、あちこち散策をした。
街の真ん中を流れる川沿いを
手をつないだまま歩き、
立ち並ぶおみやげ屋さん、裏道に入って
工芸のお店や小さな神社、
少し山を登って見下ろす街並みなんかを堪能した。
鼻がきく、とでもいうのか、
宇髄さんはまるで知っていたかのように、
人気のない、静かで、でもとっても素敵な場所を
探り当て私を楽しませてくれた。
おかげで私は大満足。
とっても満たされていた。
「宇髄さん、とっても楽しかった!
旅って素敵だねぇ」
私は怒涛のようにやってくる『初めて』に
ひどく興奮していた。
「そりゃよかった。
楽しんでくれて俺も嬉しい」
にこりと笑いながら、
たくさんに増えたおみやげの包みを
部屋の隅に下ろした。
こういうところに来ると、
普段目にも止まらないものが気になって、
そして
欲しくなってしまうものなんだという事を知った。
わざと口には出さなかった思いを、
すぐに読み取ってしまう宇髄さんは
大喜びで、しかも次々と購入して下さって
その結果が、あの大荷物だ。