第12章 形影一如
そんな事を言っても、
この状態の睦が素直に言う事を
聞くわけねぇのはわかりきっている。
そして思った通り、
俺の肩に顔を伏せたまま
ぷいっと明後日の方向を向いた。
……だろうな。
まぁ、確かに俺が悪かった。
素直に胸の内をさらしてくれたのに、
あんなこと言っちゃいけねぇな。
でもこいつ、外で触れられんの嫌がるから、
…俺は浮かれるとすぐに襲いたくなっちまうし
睦のため、と思っての事だったんだ。
「睦ー。睦ちゃん。
仲直りしようぜ。せっかくこんなとこ来て
ケンカなんてつまんない事したくねぇ。
俺が悪かったから、な?」
睦の髪を撫でると、
…うん、と頷いてみせる…。
あれ…もしかして…。
ズッと、鼻を啜る音。
もしかしなくても、泣いてる。
実は、泣き虫だったの忘れてた。
自覚はないみたいだけど。
落ち着くまで待ってやろうと思い、
背中を緩くさすってやった。
何でだろうな、こういうの、
全然めんどくさくねぇんだよな…。
むしろ、こうやってくっついていられて幸せ、
ぐらいな勢いだ。
どんな状況でも、睦と居られれば
それだけで完結だ。
俺はもう、末期症状だ。
「ごめんなさい」
ぽつりと聞こえた涙声。
「ん?」
背中を撫でる手をふと止め、
首をそちらに向けた。
…泣き止んだか。
「かわいくなくてごめんなさい。
宇髄さんが、私を受け止めてくれないのかもって…
思うと…悲じぐでー」
「あーもー、んなわけねぇだろー?
何でまた泣くんだよ」
「だっでー宇髄ざんがぁー」
こりゃもう埒があかねぇや。
考え直した俺は、睦をしっかり抱えて
地面に降り立ち、その木の根元に座り込んだ。
その上に睦を横抱きにしてやると
イヤでも顔が合う。
涙で濡れた頬を拭ってやり、
不安そうに揺れる瞳を見つめたまま唇を合わせた。
逃がさないよう、しっかり押さえ込み
思いを伝えるよう口づけを深めていく。
睦は特に抵抗もせず、されるがまま。
本格的に不安にさせていた事に気づき、
それを詫びる代わりに、優しく口内を犯した。