第12章 形影一如
「ダメなんじゃなくて…っ!
甘くて、どうしたらいいのか…」
「わからない?」
額に唇を押し付ける。
「…うん。そういうのも…」
そういうの、って…
「口づけの事か?これはいいだろ。
明確な愛情表現だ」
「そう、なの…?じゃあ、ぎゅってして?」
両腕を伸ばしてくる睦の上に
屈むようにして覆い被さると、
睦はきゅっと俺の首にしがみついた。
ご要望通り、腰のあたりを抱きしめて…
「宇髄さんだいすき」
ちゅっと頬に口づけられる。
………
「睦お前さ、
いきなりそういう爆弾を落として来んの
どうかと思うぞ」
「えぇっ⁉︎よく言う!
自分こそ人のこと言えないくせに!」
パッと両腕を
離してしまった睦のソレを
もう一度巻きつけさせるように誘導し、
「俺はいいんだよ。いつもの事だから。
でもお前は違うだろ。
普段しねぇ事をされるとな、
嬉しくなって更に舞い上がっちまうだろうが」
離れられないように
小さな体を片手で抱き上げてやる。
睦は驚きながらも
それを上回る不満をぶちまける。
「そんなこと知らないもん。
じゃあいい。もう、しない」
「いや待て、それは違う」
紅く染まる頬を見る限り、照れるのを押さえ、
頑張って想いを伝えてくれたのがうかがえる。
そんな事をされて喜ばない俺じゃねぇ。
「何がですか!
もう…あちこち言わないで下さい!」
下りようとして暴れる睦を阻止するべく
手頃な木の上に跳び乗った。
「ちょっと!私が動けなくなるの知ってて…!
卑怯者!」
睦は下を見ないよう、
仕方なしに俺にしがみつき肩口を殴りつけた。
…そんなモン、痛くも痒くもねぇや。
「何とでも言え」
睦の手を押さえ、
俺が強く言うと、ぐっと言葉を詰まらせた。
「そこが男心の妙なわけよ。理屈に合わねぇ。
普段しれっとしてるお前が、
急に可愛いこと言うとな、嬉しいけど戸惑うだろ。
でも愛しいし、こっちだって惑わされるわけよ」
「…だから、もうしないって言ったでしょ」
あーあ…
「ヘソ曲げんなよ。睦ちょっと顔上げろ」