第52章 スルタンコラボ更に追加 〜睡蓮の願い〜
「揚げ足取んなよ」
俺の前にエスプレッソを出しながら
「頼むから貿易先の王の前で
ボケーッとしないで下さいよ…
心ここに在らずもいいとこですって。
見てるこっちがヒヤヒヤします」
先ほどの謁見の際の
俺のぼんやり具合を思い出して
アーディルは大袈裟に首を振って見せた。
「ンなこと言われてもよ…」
頬杖を突いて窓の外ばかり眺める俺に
これ見よがしにため息をつく。
「はいはい…で?
何かしたって?」
俺の前のイスに腰を下ろし
一旦兄貴のツラに戻った。
やる気を引き出す為に
とりあえず話を聞く気になったらしい。
これ以上ボケーッとされたら堪らない、
そんな感じですかねー…
「わかんねぇ…」
「話を聞いてもらいたいわけ?
それとも1人で考えたいの、どっちよ?」
「あー…」
「………では」
アーディルは座ったまま頭を下げると
そのままの姿勢でイスから立ちあがろうとする。
「ちょっと待てよー。
少しくらい悩む時間があったって
おかしかねぇだろうがよー」
「心が決まってからお呼び下さい」
「決まった決まった。今決まった。
俺がなんか悪ィことしたかってコトだ」
俺が話し始める姿勢を見せると
アーディルは再びそこに腰を下ろした。
「だから、何の話なの」
「睦だよ」
「睦様…」
その名を聞いた途端に
眉間にシワを寄せ軽蔑の目をこちらに向ける。
「何だよ、なんか聞いてんのか!」
「聞いてるわけないでしょ。
また睦様に粗相したのかって
呆れてただけ」
「ややこしいな…!
何も知らねぇくせにンなツラすんなよ」
「今度は何をしたのよ、愛しの姫に」
「何もしてねぇんだよ!
だから悩んでんだろ」
「はい?何を言ってるのしっかりしなさいよ
情けないわね」
そう吐き捨てたアーディルは
自分のお気に入りの紅茶をひと口すすった。