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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第11章 愛心




「ダメよ、今のは忘れなさい。
こういう時は、誰かに何かを言われると
そうじゃないのにそんな気になってしまうから」

「……」

そうかもしれない。
でもさっきのおばちゃんの発言は、
的を得ていると思う。

自分に自信がない…と。
そうだとしたら、
私が自分でどうにかしないといけないんだ。

考え込んでしまった私を心配したおばちゃんは

「ホラ睦ちゃん!
蒸しパン食べる?」

私の意識を他所に向ける作戦に出た。

「おばちゃんの⁉︎」

そしてしっかり、乗っかってしまう私。
だっておばちゃんの蒸しパン、大好きなのだ。
にっこり笑ったおばちゃんは
蒸しパンが山盛りのお皿を
テーブルの上にどん!と置いた。
もう最初から
私に食べさせる気満々じゃない、この量…。









「遅かったな」

玄関先で心配そうに声をかけられ、心が痛む。

「ごめんなさい。おばちゃんの所に寄ってきたので…」

私はにこっと笑ってみせた。

「……ヘェ」

…気のない返事。
そうだよね。
私の変化に、この人が気づかないわけがない。

もう、時間の問題なのかもしれないな…。



宇髄さんの部屋にお茶を出し、
部屋に戻ろうとした時、

「なぁ睦」

声をかけられ、びくりとする。
あ、
思い切り反応しちゃった…。

「は、はい?」

「……」

私の様子を窺った宇髄さんは

「明日、店閉めたらここに来ないか?」

やけに落ち着いた声で言った。

「…ここ?」

「あぁ、あいつらもいねぇし、
居てくれると助かるんだが」

…ずるい言い方。
そんなふうに言われたら、断りにくい…。

「…はい…じゃ、寄らせてもらいますね。
夕飯、何にしましょう?」

私は努めて笑顔で応えた。
不自然じゃないよね…。

私はこの人が好きなのだから、
何も隠したりしなくてもいいのに…。
自分のしている事が、ひどく無駄な気がして…
私は部屋を出ようとしていたのを引き返し
体をこちらに向けて座っている宇髄さんの
正面に正座をした。

「…あれ、何…っ」

もう去ろうとしていたはずの私が戻って来て、
更に座り込んだのを見て驚いている。
私は構わず、どんっとぶつかる勢いで
彼の胸元に抱きついた。
背中に腕を回して力いっぱい。

咄嗟に私の肩に手を置いて
戸惑ったように顔を覗き込んでくる。


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