第51章 .☆.｡.:..密室:*・°☆.

このやり場のない気持ちは
彼がひと言発する度に
厭悪に姿を変えていくような気がした。

「ごめん…ただお前を、守りたかった」

衣擦れの音がして
彼が近づいた事を知る。
私は布団に深く顔をうずめて耐えた。

彼を責めてしまいそうな口を必死で噤む。

今更何を言うの
守ってなんかいらないよ
勝手なことばっかりして

素直に謝っている彼に
そんな事を言ってしまえば後悔するのは自分だ。
そして
傷つけてしまうに違いない。
そんなの私の本意じゃない。

だけど、ごめんと言われて
ふたつ返事でもういいよと言えるほど
私の心は整ってはいなかった。

故にこうして
黙っているのが最善なのだ。


…そう、結論を出したのに


背後から伸びてきた手が
私の視界に入った。
その動きがやけに緩慢に見える。

抱きしめられたりするのかな

そう思ったら全身が大きく震えた。
触れられたくないと強く思ってしまった…
重症だ。

何にせよ、
これから私はこの人を傷つける…


「…っ」

掛け布団を抱えたまま
私は畳の上に逃げ
部屋の壁にどんと背中をつけた。

隠れるように
抱えた布団に全身をくるませて
折った膝へと顔を伏せる。

顔を、見せられない

理由は　諸々…

「…睦」

少し困った声。
淋しげで、悲しげで
私の胸を締め付ける。
だけど私は、…


「話をする気はあるか？」

私は黙って首を横に振った。

「聞く気は？」

もう１度、首を振る。

「…抱きしめるのも？」

その質問には
間髪入れずに
強くかぶりを振った。

「俺が、怖くなった…」

それは、…わからないな…

そうなのかもしれない。
だけどそれを認めてしまうのは
ひどく怖かった。
だって宇髄さんは
私を救ってくれる筈の人だから。

それなのに怖いだなんて…
そんな事になったら
この先私は何を頼ればいいんだろ

どうしていけばいいの　　？