第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
そして
足音が近づいてくる気配を感じ
私の心臓が大きく跳ねた。
落ち着かなきゃ
そうじゃなきゃ、
私が目覚めている事なんてすぐにバレてしまう
だけど
そう思えば思うほど緊張は増していった。
私が横になっている枕元に
注意深く、物音を立てないように
腰を下ろしたその人。
カシャンと小さな打撃音がした。
…よく耳にする音。
お盆に乗せた、グラスのような。
背中のあたりに
強い視線を感じる。
でも
大丈夫…
こうして、目を閉じて
このまま眠ってしまえばいい
それならこの人も
私の事を起こすまいと
静かにしていてくれる筈。
うまくすれば
部屋から出て行ってくれるかもしれない。
大丈夫だよ
私は何度もそう言い聞かせ
ドクドクとうるさかった心臓も
ようやく落ち着いた頃…
「……睦…?」
微かに…
内緒話でもする時のような
囁き声が私を呼んだ。
痛いほどに心臓が脈打って
肩を揺すってしまいそうになるのを
どうにか堪え
私はジッと布団の中で耐えた。
「睦…」
もう1度名を呼び
私が無反応でいる事を確認すると
宇髄さんは長いため息をつく。
「ごめんな…」
聞き間違いかと思った。
それこそ、反応できなくなってしまった。
ごめん?
そう言ったの?
何がごめんなの?
謝るような事なら、しないでよ。
際限なく求めてしまう自分が
恐ろしくなるほどの行為を強いて
私の事を突き落としたくせに
眠っているはずの私に
人知れず謝罪をするなんて
そんなおかしな事があるだろうか。
ごめんなんて
1番言われたくない。
「睦…なぁ、」
もう、気が付いているのだろう。
私が眠ってなどいない事に。
それでも私は動けない。
振り向く事も出来ず、
返事をする事も…
いや、したくないのだ。