第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
「睦がよきゃいいって
本気でそう思うけどな…
実際嫌われると、痛ぇモンだな…」
伏せているから表情はわからない。
だけど
落ち込んだような声から
そんなもの容易に想像できる。
どうしよう…
違うよって言いたい
伝えなくちゃいけないのに
でも動けない。
上手くできそうにない。
だって身体が震えているんだ。
私がこの人を拒んでいる事なんか明白だ。
だけど、嫌いになったわけじゃない。
いつのまにか
彼が目の前にいるのが気配でわかった。
抱きしめられたらどうしよう。
そんな不安ばかりが心を支配する。
考えなくてもいいことばかりが
頭をよぎった。
話も聞きたくないと私が言ったために
宇髄さんは何も言わなかった。
その代わり、なのかどうかは不明だが
頭の上に
大きな手がふわりと乗せられ…
「‼︎」
私は咄嗟に
その手を跳ね除けていた。
おかげで私を守っていた布団は
役目を果たせなくなってしまい
姿を現す事になった私はいたたまれなくなり
部屋を出ようと立ち上がる…筈だった。
驚きに目を見開く宇髄さん。
立とうとしたけれど
身体に力が入らず
私がその場にへたり込んだからだ。
「睦…⁉︎」
私の危険を察知して
宇髄さんは咄嗟に両腕を伸ばし
受け止めてくれようとする。
「さわらないで!」
自分でも驚くほどの大きな声が
部屋中に響き渡った。
私は両手で自分の身体を抱きしめて
その場にうずくまる。
「もういいです…もう…さわらないで」
もう充分だ。
さっきまで味わわされた責め苦を
いやでも思い出させられた。
何度懇願した所で
お構いなしに襲い来る快感の波。
それに押し流された自分が怖い。
もうあんな事、されないだろうけど。
今はいい。
もういいの。
「睦行くな、ここに…」
ここに…?
どこまでも静かな宇髄さんの声に
どこか違和感を覚えた。
だって
この人はきっと、
自分のした事を間違っていたと思ってはいない。
さっきの『ごめん』は
何に対する謝罪なの…?