第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
すっかり役立たずになった私の
この耳に届くのは
庭で囀る小鳥の語らいだけ
時間なんてものは
どこかに行ってしまったような錯覚を起こす
…でも
そんなわけはなくて
だけどそんな事を考える余裕はなかった
さっきまで自分がされていた事が
怖くて仕方ない
自分が自分でなくなるような
ばらばらにでもなってしまうかのような
なのに逃れられなくて
もっとと求めてしまう自分が恐ろしかった
高い天井がぐにゃりと歪む。
冷たいものが目尻を伝って枕へ吸い込まれた。
知らず流れ落ちていく涙が
私を絶望の淵へ突き落としていくようだ。
どうして泣いているのか
それは自分でもわからない。
悲しくはない
怖いのは、…少し
幸せも…少しだけ
でも大半は疑問だ
しばらくぼーっと天井を見上げていた。
何も考えずにいたかった。
だけど
廊下を歩く音が近づいて来るのを
この耳が捉えてしまい
私は咄嗟に
自由のきかない身体を横臥させて
目元まで掛け布団を引き上げ隠れる。
その足音の主が
この部屋に入ってこようが
素通りしようが
私はそれから逃げたかった。
こんな自分を
知られたくなかった。
いない事にしてほしくて。
だけど無常にも
足音は襖の前でピタリ止まり
スッと静かな音を立ててそれが開かれた。
畳を踏む微かな音。
襖が閉まり縁が合わさる音も
普段なら気にもならないくらいの
小さな物音が
この静かさのせいで浮き彫りになる。
しばらくその場に留まるその人物。
私が眠っているのかどうかを
見極めているに違いなかった。
こんな状態の私を
誰か違う人に任せるわけもない…
この人物は、間違いなく宇髄さんだ。
そう思っただけで
鳩尾の辺りが小さく震える。
それを必死に抑え込み
乱れそうになる呼吸を何とか堪えた。