第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
少しだけ身を引いた。
なんでこんな事で
いちいち照れなくちゃいけないんだ。
別に、何をされたというわけでもないのに。
へんなの。
「そうか。なら何か持ってきてやる」
むくっと起き上がった宇髄さんは
それでもまだ私の髪で指先を遊ばせている。
「えぇ…?いえ、ほんのちょっと
何かをつまめればそれで充分なので…」
長い指を握ってそれをやめさせると
「ちょっとしたモンを持ってくりゃいいんだろ」
少し不満そうに言って
起こした身体を私に寄り添わせた。
有無を言わせないような雰囲気。
寄せられた体温に心臓が大きく跳ねた。
さっきから何かが違うような気がするのに
何が違うのかがわからなくて
もやもやする。
それが妙な緊張感を生み
私の身を硬くさせるのだ。
居心地が悪いような、いいような…?
「そうですけど…。
山ひとつ越えていくわけじゃないし
自分で行けるんですけど…」
「俺が行ったらだめなのか?」
ふと間合いをつめられ
頬が触れた、だけではなく
囁きが耳元に風となって吹いてくる。
「だめなんじゃなくて…
なんでそんなに行きたいんですか?」
顎を引き、身をよじって
距離を取ろうとする私を両腕で閉じ込め
「睦はここにいればいいからだ。
お前は甘える事を知らねぇからな。
こっちから甘やかさねぇと
ずっと気ィ張ったままになっちまうだろ」
きっぱりとそう言い切るけれど、
「…ほんとに、それだけですか?」
もっと違う所に真実があるように感じて
私は突っ込んで訊いてみた。
だって今日の宇髄さんはいつもと違う。
私にだってそれくらいならわかる。
何が、まではわからないのが
口惜しいけれど…
「疑う余地があるか?」
わざと
唇を耳に充てて話すのは
私が慌てる様を楽しむためかな。