第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
それをただ眺めていた宇髄さんは
「…なにしてんの?」
寝転がったまま畳に頬杖を突いている。
……
何をしているように見えるだろうか。
それは見たらわかるだろうから
きっとそういう事を訊いているわけではない筈。
どういう意図で着物を直しているかと
そっちの意味の疑問だろう…というわけで、
「お腹、すきませんか…」
遠回しにごはん作ってくるねと伝えてみる。
さっきから刺々しい雰囲気が伝わってくるから
私はちょっとご様子窺いだ。
やれやれと眉を上げた彼が
ちょいちょいと私を手招きした。
何事ぞと身を屈めると
口元に指先を添え、内緒話の格好を取る。
条件反射とでも言うのだろうか。
顔を寄せ耳を傾けた…ら
伸びて来た両手に頭をわしゃわしゃと
撫で回された。
それでなくても乱れていた髪が
更にぐしゃぐしゃにされてしまい
「痛いです…!」
悪戯な手首を掴んでやめさせようとするけれど
宇髄さんはやめる気なんかない。
前傾になっていた私は
そこに膝を折って座り込み
何とか回避しようと
力を入れたり身を引いたり
あれこれしてはみるのに
まったく効果はなかった。
「宇髄さんやめて下さい…っ」
「睦で腹いっぱい」
「はい?」
私は器用な方ではない。
どちらかというと不器用だ。鈍臭いし。
頭の切り替えも遅くて
後から気がつく事の方が多い。
そんな私が
いきなりそんな事を言われて
ついていけるはずがないのだ。
「何ですか?」
あぁ声が出る…
「だから、腹はいっぱいだっての」
さっきまでのわしゃわしゃをやめ
今度は手櫛で整えてくれ
「睦の髪はするするだな…」
なんて言いながら
その感触を楽しみ出した。
…手つきがひどく優しくて
急に照れくさくなってくる。
「…椿油が、」
「睦はどこもすべすべで
気持ちいいけどな」
「え…っ」
私の話を遮って
宇髄さんが私を褒める。
照れくさくなっていた所へ持ってきて
そんな事をされたんじゃ
もう耐えられるはずもなく…
「私は、何か食べたいです…」