第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
目を閉じて大人しくしている私の肩を
とんとんと調子良く叩いてくれる。
それがまた私の眠りを促進させるんだ。
すとんと
眠りに落ちるその時
この耳元に絡まっては流れていく鼻歌が
私を現実へと引きずり戻した。
…うたってる
しかも、私がよく口遊む童歌だ。
幼い頃から
1人でいる時にいつも歌っていたこの歌。
クセになっているのか
未だに歌ってしまう。
そのせいかな
この人が歌ってる所なんて初めて見た。
いや、聴いた?
私はもうオメメパッチリだ。
相変わらず大きな手は
私の肩をぽんぽんと叩く。
寝かしつけのつもりなのか
無意識のうちにやっているのか
とにかく幸せなのだけれど
眠気だけは何処かへ行ってしまった。
優しくて
それこそ夢の中にでもいるかのような
その歌声に魅せられてしまって
眠ってなんかいられない。
私がまばたきをする度に
彼の肌をくすぐっていたようで
「……起きちまったのか?」
肩ぽんぽんが
頭よしよしに変わった。
これはこれで心地いい…
「寝てていいのに」
なぜか残念そうに呟くと
ころっと頭を傾げて私の顔を覗き込んだ。
こちらを向いた彼を見上げると
ん?と目を見開いて見せる。
残念なのは私の方なんだけどな。
「どうかしたか?」
まともに声が出せる気がせず
私は小さくかぶりを振るに留めた。
ホントは言いたい事がたくさんある。
どうもしないよという返事とか、
さっき
これじゃダメだって言ったのは
一体どういう意味かとか…
だけど1番言いたいのは
もっと歌っていてほしいってことだった。
耳に心地いいあの声を
もう1度聴きたいって言いたい。
また声が出るようになったら
子守唄でもお願いしてみようかなぁ…
あ、水飲んだらいいのかも。
それならと
彼の胸に手を突いて上体を持ち上げようと
力を込めた。
だけど当然、その腕に阻まれる。