第11章 愛心
でもこれからは、それも許されるのだろう。
なにより、
睦のそばにいてやれる事が喜びだ。
「睦、朝だぞ」
試しに声をかけてみる。
さっきは
ゆっくり寝かせてやろうなんて考えていたくせに
1人だと余計な事を考え込んでしまうから。
「睦、おはよ」
微塵も動かねぇ。
人形みてぇだな。
…こうやって、俺のそばにずっといればいいのに。
ただにこにこ笑って、俺の隣にいてくれたら。
…そんな事を言って、
めちゃくちゃ怒らせた事があったな。
——ホラまた余計なこと考えた。
「睦ちゃーん、起きて」
額に口づける。
「…ん」
少し浮上した意識をつないで、
睦が俺にしがみつく。
「おはよ睦」
おはよ、の一言に
ふあっと欠伸をひとつした。
…まだ、眠たいよな。
でも、
「お前がいねぇとつまんねぇの。
そろそろ起きろ」
「おきた…」
目をこすってふにゃふにゃ言った。
「まだ眠たいのに…」
もう一回、欠伸をして
ぱちぱちと瞬きをした。
「ごめんな」
素直に謝る。
睦は少し目を見開き、
にこっと笑った。
「大丈夫。おはようございます」
昨夜の余韻を
そこかしこに残した睦が痛々しくもあり、
俺のもの、という気がしてひどく愛しく感じる。
「…おはようって、いいな」
「おはよ…?」
「あぁ。朝一番に睦に会えるのって、
すげぇいい」
睦はおれの目を眺めて、少し考える。
「うん。私もそう思う」
嬉しそうに笑って見せる睦がもう可愛くて。
コレが毎日隣にいて
俺のためだけにメシを作ったり洗濯をしたり、
そんな事をしてくれるのかと思うと、
ひどく心が躍った。
俺は、全てのカタがついたら、
すぐにでも睦と一緒になるつもりでいた。
だけど何となく、
言っちゃいけないような空気を
睦が出してくる。
こうやって一緒にいて、愛は感じるというのに
言わないでオーラというか…
言わせない的な雰囲気を漂わせるのだ。
待ってやろうかという気持ちと、
もう待ちきれない、
睦を想う気持ちがせめぎ合っていた。