第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
「睦…?苦しいか」
すぐそばに
宇髄さんがそこにいる事を思い出した瞬間
ひどく落ち着いた声が
耳のすぐそばで聴こえた。
瞼を開けると目の前に
心配そうに私を覗き込む宇髄さん。
咄嗟に両手を伸ばし彼を求めてしまう。
涙も出ないくらい混乱していた。
もうここが何処なのかなんて
考える余裕がない。
小さくかぶりを振る私を見て
おかしい事に気がついてくれて
「あー…よしよし、
ちょっと落ち着こうな」
そう言って建物の影に私を連れ込んだ。
表通りから姿が見えなくなった所で
宇髄さんは立ち止まり
手にしていた荷物を地面へと下ろす。
様子を見るように私の頭を撫でていたけれど
彼の着物の袂を握りしめたまま
浅い呼吸を繰り返す私を
そっと抱きしめてくれた。
音楽を刻むように
背中をとんとんと叩いてくれて
いつものその優しい感覚に
ほどなくして落ち着きを取り戻して行く。
私の扱いなんて手慣れたもので
どうしてやればどうなるかを
知り尽くしている宇髄さんは
私が落ち着く折までお見通しのようで…
「珍しいな、こんな外で…。
なんかあったか?」
それでも気遣わしげに私を覗き込む。
私にとっては大事(おおごと)でも
宇髄さんにとってはただ突然すぎて
何があったのかわからなかっただったろう。
「匂いが…」
この人にわかっていてもらう事はとっても大切。
だって、いつこうなってしまうか
わからないのだから。
自分だけではどうにもできない以上、
宇髄さんに助けてもらうしかない。
という事は
宇髄さんにはちゃんと
理解していてもらわなくちゃ
私はただ苦しむ事になる。
過呼吸なんてそのうち治まる。
大した事じゃないのかもしれないけれど
俺が何とかしてやる
この人がそう言ってくれる以上…
私も、それを嬉しいと思う以上は
正しく伝えておく必要があった。
「匂いが…さっきの女の人がつけてた…」
「あぁ。あれが……
なんかを思い出したんだな…?」
相変わらず、察しのよろしい事で…
「あの人と、同じ匂いで…」