第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.
通る度に買っていたのでは
それが当たり前のようになってしまって
ありがたみが薄れるのと同時に
無い日は物足りなくなりそうで
ちょっと恐ろしい。
だけど宇髄さんは、
「俺といる時くらい甘えたっていいのに」
つまらなそうに呟いた。
わかっている…
宇髄さんはすぐ、私に何かを与えたがる。
物欲も食欲も乏しい私は
ほぼおねだりをしないため
宇髄さんは物足りないようだった。
…そんなこと言われても
私は欲しがることに慣れていないのだから
仕方ない。
小さい頃に与えられて来なかったのが
悪かったのかな…
「宇髄さんは両手塞がってるじゃありませんか。
また今度、もし身軽な時に通りかかったら
たくさん買ってくださいな」
後ろから来る宇髄さんを振り返ろうとした時
ちょうど前から
若い女性の4人連れがやって来た。
横に広がって楽しそうに話をしていて
こちらがよそ見をしていたら
きっとぶつかってしまうと思い、
振り返るのをやめ少しだけ道の脇に避ける。
私の半歩後を歩く宇髄さんも
それに気づき私に倣った。
と
その4人とすれ違った瞬間、
ふわりと華やかな香りが花を掠める。
甘く、濃く、纏わりつくような
匂い
楽しげな笑い声が
私と宇髄さんを通り過ぎて行った
「元気なのはいいが
あんな広がって歩くのも珍しいな…
あれ…?睦…」
宇髄さんは過ぎた集団を見送りながら
ふと前を向き直り
そこに私の姿がない事に少し慌てて
キョロっと辺りを見渡している。
その私と言えば
集団をよけた場所から動けないまま。
今は暑い季節じゃない。
木々は茶色く冬色で…
少し春めいて来たとは言え
まだまだ寒い日だってあるほどなのに
掌や額、首筋からも
汗が一気に吹き出すのがわかった。
目の前が霞む。
息が継げない。
継げないながらも
ゆっくりと息を吐きながら
目を閉じてみる。
わかったわかった。
大丈夫だよ私。
落ち着いて、
大丈夫、
ここは外だし。
…外?
外って関係ある?
違う、
宇髄さん…!