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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第51章 .☆.。.:..密室:*・°☆.








「睦はここにいろ」


これまで幾度となく繰り返されてきた台詞。
彼からこの言葉を聞くたびに
私は胸の奥から
温かいものが溢れて来るのを感じていた。

私を腕の中に閉じ込めて
優しくそう言ってもらえるのが好きだ。
彼のものにしてもらったような気がして
大きな幸せを感じられたから。


だけど

今日ばっかりは、少し
意味合いが違っていたようだ……


















幼い頃に刻み込まれたものというのは
いつのまにか自分の中に蓄積されていて
大人になった今でも
ふとした時にその効果を発揮する。

普段は何ともなく過ごせているのに
何かをきっかけにして
その記憶が呼び起こされるのだ。

その時が、まさに恐怖…

自分ではなんとも出来なくなってしまう。





「後は何かないか?」

自分の手元を見下ろしながら
宇髄さんが私に尋ねた。

私は頭の中でもう足りないものはないかを
指折り考えてみる。

「はい…もう、ありません」

たくさんの人が町に出ていた。
たまの休みだというのに
買い物に付き合ってくれるという彼に
大いに甘えた私は
まだ足りないわけではない
お味噌やお醤油まで持ってもらっていた。

助かるなぁとほくほくしていると
ふと目に留まったのは
いつも贔屓にしている甘味のお店。

……でも今日は
1人じゃないし。
荷物もたくさんだし。

そう思って見過ごそうとしていたら

「買ってやろうか?」

と、笑いを含んだ声が聞こえてきた。

「えぇ?」

声につられて顔を上げると
苦笑している宇髄さんと出会した。

「どうせいっつも寄るんだろ?」

「いつもは寄ります…
よくわかりましたねぇ」

言いながら私は
足早にお店を通り過ぎる。

「おい…」

宇髄さんは店に目をやりながら
私の後をついてきて

「いいのか?」

何故か名残惜しそうに訊いた。

「はい、またいつでも来られるので」

歩調を緩めた宇髄さんの前を
カラコロと下駄を鳴らし歩きながら答える。


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