第50章 .☆.｡.:..初心:*・°☆.

宇髄さんはパチリと目を開けて

「俺を喜ばせるの、うますぎ」

綺麗な微笑みを浮かべる。
視界から溢れるくらいの距離に
ものすごく違和感を覚えるけれど
それ以上に
今言われた言葉の解析にいっぱいいっぱいで
私は離れる事も忘れた。

「え…」

「な、そのわかってねぇとこが
おもしれぇよな」

私がわかっていない事を
喜んでいるかのような口ぶりだ。

「わかっていて、ほしくないんですか？」

「ん？ははっ、そうだなぁ…
全部わかってたらつまらねぇだろ。
予想外の事されるからおもしれぇし
もっと知りたくなるんだよ」

額を合わせていただけだったのが
いつのまにか
頭を抱え込むような格好になっていて

「宇髄さん…そと、です」

こんな場所には誰にもいないけれど
でも、外です。
落ち着かないのです。

「睦がこんなに我慢させるからだろ」

我慢…て…。

「宇髄さんが、ヒマじゃないって言ったから
…今更わがまま言えないって思ったんです」

結局、私は我慢しきれなくて
言っちゃったけど…
宇髄さんみたいな貫く強さは私にはない。

「あぁ、あんなモン…。
ヒマなんかいくらでもある」

「えぇ…っ⁉︎」

やっぱり私のためについたウソなのかな。

「あるある。お前が俺と向き合うってんなら
もうヒマだらけだ」

あれ、ちょっと違った。

だけど
それもまた私のためなのかなぁ？なんて
そんな勘違いをしそうになってしまう。
だってこの人にヒマなんかあるわけがない。
忙しいのなんか目に見えている。

無理して私のいいようにしようとしてくれているだけなんじゃないかな…？

「勘繰るなよ」

痛くない程度に
額をコツンとぶつけられた。
余計な事を考えていたとバレたようだった。

「俺は睦のためだったら
いくらでも時間空けるし
そんなの全然苦じゃねぇんだよ」