第50章 .☆.。.:..初心:*・°☆.
あぁ、なんだか
すごい事を言われたような気がする。
私が言ってもらってもいいのだろうか。
私なんかが言ってもらえる言葉だろうか。
だけど他でもない
この人に言ってもらえて
ひどく心が震えた。
これは
感動、とでもいうものなのかな。
「俺じゃねぇ事なんてもうあり得ねぇだろ?
ヨソの男に乗り換えるなんて
もし考えてんのなら諦めてくれ」
「えぇ…?」
なんだって…?
「さっきから全然こっち見ねぇしよ。
やっぱ俺に気がねぇのかななんて
柄にもねぇこと考えちまう。
俺の気持ち試してんなら受けて立つけど
お前はそんな器用じゃねぇし、
だけどここまで来て
睦を手離す気なんてサラサラねぇしなぁ」
そこまでぶち撒けて
宇髄さんはふと黙る。
沈黙が私の心を集めた。
つい凝視め合っていると
ちゅ、っと互いの唇が触れて…
力無く垂れていた腕を
即座に彼の胸に立てる。
「なにするの!」
外だって言ってるのに!
「あぁ、悪ィ」
さほど反省の色もなく
宇髄さんは私を強く抱きしめた。
ほんとに人の話聞いてないんだ…
もうどうしようもない私は
ただ石のように固まってしまう。
「先に断り入れるべきだったか?
口づけしてもいいですかねー?」
「だめですっ」
もうされたけど。
でもだめでしょ。
抱きしめられたまま離れる事も出来ず
私はその説得力皆無なひと言を武器に
思い切り顔を逸らした。
「えーじゃ訊くんじゃなかったわ」
「どっちにしろだめなんです!」
「だめじゃねぇだろ。
さっきしたし」
「突然なんてずるいです!」
「ずるくてもする」
そう言いながら
今度は私の頬に唇を押し当てる。
「ひぃ!」
色気も可愛げもない声を上げてしまった私。
もう混乱を極めた頭が
この人にどう言ったらわかってもらえるかを
あれこれ考えたところで
いい案なんて浮かぶわけもない。