第50章 .☆.。.:..初心:*・°☆.
少し前まで好きな事を言っていたと思う。
結構ひどい事も割と平気で言えていたのに。
自分の想いを自覚した途端
思っている事の半分も言えなくなっていた。
言えないだけでなく
直視すらできないのは重症だ。
何でかなんて
理由なんかたくさんありすぎて…。
私なんかに想われて迷惑じゃないかとか
こんな事しててもいいのかなとか
余計なこと言って嫌われたらやだなとか
目が合って顔が真っ赤になったりしたら
それもまた恥ずかしいなとか
…その他諸々
考えるだけ無駄かもしれないような
どうしようもない事を
つらつらと考えてしまうのだった。
「嫌なことでもあったか?」
優しい声色。
会話なんかしなくても
この声をずっと聴いていられたら
もうそれだけでいいんだけどな…
「いえ…」
「心配事でもある?」
「ありません」
「じゃ怒ってんのか」
「いいえ…」
困った事にそのどれにも当てはまらない。
…
今の私は、そう見えてしまっているという事だ。
もしかしたらそっちの方が『困った事』に
なりかねないのではないだろうか。
誤解をさせているような気がする…
「急だったもんなぁ…」
再び小さなため息をつき
宇髄さんはかくっと首を落とした。
「そっか…そうだよな。
ほんとは何か予定があったか?
睦は優しいから
訪ねて来た俺を追い返せなかったろ。
ごめんな」
「え…?」
そんな、申し訳なさそうな顔で謝らないで。
予定なんかなかった。
むしろ来てくれて嬉しかったのに。
そして優しいのは宇髄さんの方だ。
「まぁ俺も、そんなにヒマじゃねぇしよ。
それ食ったら帰ろうな。家まで送るから」
「……は、い…」
…あれ…?
はい?
今私、はいって返事をしてしまった。
それは宇髄さんの言った全部を
肯定した事になるんじゃないのかな…
急に訪ねて来られて
本当はすべき事があったのに断りきれず
無理にここまで来てしまった…って
宇髄さんは思ってる…?