第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「私が女だってわかってて
着物を着させてくれたんですよね?
違いますか?」
ほんの少しだけ
自信なさげにしている仕草が可愛い。
さっきの勢いは
急に影をひそめた。
「しかも、あの時の鬼でした。
私に、敵討ちをさせようと
してくれたんですよね…」
こいつはなかなか鋭いな。
お嬢だと思ってなめていたが
ちゃんと物事を考えるだけの頭があるようだ。
「俺にしか出来ない任務があるからなんて
あの時言ってたけど、…
隠れて私の事見ててくれました。
危ないところを、また助けてくれた」
「…俺にしか、出来ねぇだろう…
何かあった時に助けてやれんのなんか
俺しかいねぇんだ」
仕方なく俺がそう言うと、
睦はひどく嬉しそうに笑って
俺の胸元に勢いよく抱きついた。
「やっぱり!ありがとうございます!」
「だからぁ…
礼を言われるような事じゃねぇんだって」
心から申し訳なく思っているというのに。
こいつの嬉しそうな笑顔で
どうにも調子が狂っちまう。
「私はそうは思ってません」
「わかんねぇヤツだなぁ…」
「わかりません。だって
音柱様がしてくれた事は
どれも全部、私のためだったのに」
「…それは、…そうもなるだろ。
こっちゃ罪の意識を、」
「なら、違うので改めて下さい」
「持ってるってのに……あぁ?
なんだと?」
俺の言葉に、自分の意見を挟んで来やがる。
おかげで
聞こえたような聞こえなかったようなだ。
つい訊き返してしまった俺に、
「私は感謝しかしていないので、
その考えを改めて下さいって言ったんです」
しっかりはっきりと言い直す睦。
こいつはいつも、恐れねぇ。
眩しいくらいの美しさだ。
前向きすぎて
この俺でさえ霞んでしまいそうだよ。
どうしたら、そっちに考えが及ぶのか
詳しく聞かせてもらいてぇくらいだな。