第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「まだ、鬼殺隊に入りたての時だった。
まだまだ片手がわからずに手こずって
ようやく追い詰めたのが
睦の暮らしてたあの洋館だったんだ」
こんな穏やかな日にする話じゃねぇな。
いやでも、
雨の日なんかだったら
辛気臭くてたまらねぇか。
「すまねぇ。
謝っても、謝り切れねぇが…」
睦の様子を窺うも
俯いてしまっていて
どんな表情をしているのかを
知る事はできなかった。
「……」
「睦…どう謝りゃいいか…俺、」
言葉を選んでいる俺に、
睦はパッと顔を上げる。
泣いているものだとばかり思っていた。
だが、キッと眉をつりあげ
勇ましい面構えで俺を見据える。
「あの時、私を突き飛ばした方ですか?」
突き飛ばし……
「あー…それも、悪かった。
もうちょいやり方ってモンがあったよな…
あん時はただ必死でな…」
気まで失わせたのだ。
よっぽどだよな…
「……」
なんとも複雑な表情のまま
固まってしまった睦に
「すまねぇ」
俺はただ平謝りするしかなかった。
少しずつ睦の視線が
下へと向かって行く。
…どう出るだろう。
嫌われるならまだマシだ。
取り戻す機会はあるだろうから。
でも
冷めてしまったらおしまいだ。
興味を失われてしまったら
もう手の尽くしようがねぇ。
俺は祈るような気持ちで
睦の反応を待った。
「あの、」
「!」
もう話してもらえない、
という画も思い描いていた。
まだ大丈夫という思いに期待が高まった。
「ちょっと…いろいろありすぎて…
えぇと……ちょっといいですか…?」
睦は呆然としながら俺から距離を取り
正面を向いて地面をジッと眺め出す。
頭の中を覗いてみたい。
何考えてんのって訊いてしまいそうだ。
邪魔するような事はしねぇけど
したくなってくる。
俺、こんなにせっかちじゃなかった筈だけど。
…相手が悪ィんだな、きっと。
俺は諦めて
また空を行く雲を眺め
ゆっくりと待つ事にした。
他の事を考えるのが1番だ。