第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「和三盆ですよー?音柱様、
召し上がった事ありますか?」
ご機嫌な睦は大切そうに包みを開き
数個まとめて入っていたまぁるい塊を
指でつまんで持ち上げる。
「んー…あるようなないような…」
天を見上げ、
そんなモンをいつ食ったかと
遠い記憶を辿っていると
「それはもったいない…はい、あーん」
隣からそんな声がして
反射的にそちらへ向けて口を開き
差し出されていたひと粒を
口内へと迎え入れていた。
舌の上でスーっと一気に溶けて行くのと同時に
強い甘みがじわじわと広がって行く。
でもそれもいやらしくはなく
ひどく上品な甘さだ。
「おいしいですか?」
わくわくして俺の返事を待つその顔を見て
まずいなどと答えられるはずがねぇ。
…いや、実際うまいから。
「美味い。…ほら、」
俺は睦の手の中にある
包みからひと粒を取って
同じように睦の口元へと持って行った。
すると躊躇いもなく口を開き
小さなカケラを難なく食う。
そしてふにゃっと笑うと
「おいしいですねぇ音柱様?」
「あぁ、睦が食わせてくれたからな」
「えぇ…私は関係ありません、」
「俺には関係あんの」
甘くて幸せな時間は
長続きしねぇってのが俺の見解だ。
この和三盆も同じってことか。
すぐに溶けてなくなった。
儚くも切ないな。
「ん、ごちそーさん。残りは睦にやる」
「もう要りませんか?」
「あぁ。せっかくだ、睦が食え」
「私に遠慮、とかありませんよね?」
「そうじゃなくて、」
また淋しそうにこちらを見上げる睦に
腕を回して引き寄せる。
俺が遠慮していようが
自分の取り分が増えるのだから
喜んでいりゃいいものを。
「睦が食ってるとこ見てた方がいいの」
「私は一緒の方がいいのに」
ぷぅっと頬を膨らせ
そのくせにぱくっともうひと粒を
口に放り込む。
「食ってんじゃん。美味いかー?」
「うまーいですよー」