第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「私も、離れたくありません…だけど」
「なら睦も一緒に風呂入るか」
「いえ私は、さっき入ったし…」
「何度入ってもいいだろ?」
「そんな…混浴の銭湯じゃないんですから…」
「その方がダメだろ。
知らねぇ野郎がお前の肌を見るんだぞ」
「私はむしろその方が気が楽です」
どうよコレ。
問題発言だと思わねぇか?
俺よりヨソの男に裸見られる方がいいってのか。
そんなんおかしいだろ。
「俺が許すと思うのか」
「実際の話じゃありません!」
「わかってんだよ。でもそんな話聞かされたら
心穏やかじゃいられねぇってぇの」
「だって…音柱様とじゃ…緊張し過ぎて、」
睦はその光景を思い描いたのか
ぽっと頬を染めた。
「…俺だから、って事か?」
「それは、そうに決まってます…」
「そうなのか?可愛いこと言いやがる…」
「そ、そんな事いいので!
早く入って、早く出てきて下さい!」
睦は俺の肩を押し遣って
恥ずかしそうに顔を伏せる。
「淋しいから?」
揶揄うつもりでそう言ったのに
照れていたはずの睦は
ふと真顔でこちらを向き直り
「淋しいから…早く戻ってきてくれないと
また泣いちゃいますからね」
潤んだ瞳でそんな事を言いやがった。
こいつのツボがいまいち掴めねぇ…
この俺が翻弄されるなんて
少し前の俺には想像も出来なかったに違いない…
そうやって
簡単に本音を曝す睦の元へ戻る頃には
綺麗さっぱり、ほっかほかの俺になっていた。
用意してくれたのは、
睦のじいさんのモノだと言う寝巻きだ。
黒地で、足元にのみ赤で七宝柄を描いたもの。
…じじいの割に粋な寝巻き。
しかも…
「お前のじいさん、どんだけでかかった?」
仕立てもせずに俺が着られるなんて
なかなかない事だ。
「あー…祖父は小柄でした。でも
仕事がら、外国の方を相手にする事が多くて
その方たちへの贈り物として
たくさん仕立ててあったので…でも
音柱様は、その方たちよりも更に大きいです。
仕立てたはいいけど
その大きさに合う方は
なかなかいらっしゃいませんでしたから」
だから残ってたってことか。