第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
俺らの間では
こんな事を当たり前にしたかった。
それにしても
ここまでするのは性急過ぎるとも思ったが
任務でそれなりに疲れていた俺は
癒しが欲しくてたまらなかったのだ。
ずっと触れたかった女を
こうして抱きしめる事ができる喜びを
噛み締めたかった。
本当の意味で『触れる』のは
もう少し時間が必要だから
とりあえずは感触を楽しもうと…。
「悪ィ…ちょっとだけ、」
背中に回した腕に力を込めて
クッと胸を突き出させる。
そこに埋まる俺を
黙って見下ろしていたはずの睦は
俺の髪を掴んでいた手をゆっくりと離し
今度は優しく抱きしめてくれた。
そしてさっき『ご褒美』とした『よしよし』を
再開させたのだ。
「おかえり、なさい…お疲れ様でした」
頭のてっぺんに頬擦りまでして
睦は俺を包むように抱き込む。
少し驚いたものの
この甘く柔らかく幸せな時間を手放すには
あまりに惜しくて
睦にされるまま
俺は身を委ねてしまった。
「あぁ…ちゃんとケガもしなかったぞ」
「はい。さすが、音柱様です」
小さく漏れた笑い。
バカにされたというよりは
小さなガキの戯言を聞いた時の反応に近い。
何となくムッとした俺は
そこから顔を上げ
下から睦を見上げた。
すると目に入ったのは
ひどく優しい目をした睦。
その表情の美しさに
一瞬言葉を失った。
色っぽさのカケラもねぇ。
なんなら男のフリをしていたくらいだ。
そんな女に欲情するなんて
俺は一体どうしちまったのか
いやいや
ちゃんとね
抑えるけども…
「なぁ、俺はここに泊まってってもいいのか?」
「えぇ?」
俺の質問に睦は大きく目を見開いた。
あー…やっぱりそうなるよな。
戻るとは言ったが泊まるとは言ってなかったし。
苦笑いするしかない俺を見て
「…そんなの…
そうするものだとばかり思ってました」
睦は呆然と呟いた。
「は?」
「だって、戻るって
そういう意味なんじゃなかったんですか?
私お風呂まで溜めちゃったんですけど…」