第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
ふと、身体に目をやると
俺の願い通り
本当にあのワンピースを着てくれている。
いつもひっつめていた髪は下ろされていて
たったそれだけの事で
別人のように見えるから不思議だ。
「睦…」
小さく声をかけながら
今度は目尻に親指を充てる。
そっと撫でると
睦はすんっと鼻を鳴らし
ぴくりと瞼を震わせた。
起きるかな
いい夢見てそうな顔してる
幸せそうな
起きたくねぇかもしれねぇな
その邪魔してもいいか
だけど
起こせと言われたからには
起こす、べきか…?
起こしたいような
起こしたらいけねぇような
悪い事してるみてぇだし
それでも
帰ってきた事を喜んでもらいたいような
「…睦、」
そんな揺れる想いのはざまで迷いながら
名前を呼び続けていると
きゅうっと身を縮めてから
大きく身動ぎをした。
「ただいま」
俺の言葉に反応した睦が
ふわりと目を開く。
うろうろと彷徨った瞳が
目の前の俺を捉えた瞬間
にっこりと微笑み
「おかえりなさい…」
枕代わりになっていた両腕を伸ばし
俺の首に巻きつけ抱きついた。
熱烈な歓迎を受け
大きな喜びを感じたが
睦が
俺とベッドとの隙間に落っこちないように
ベッドの縁に身を寄せて塞ぐ。
持ち上がった上体を
包み込むように抱きしめ
「ちゃんと寝ててえらかったな」
よしよしと髪を撫でた。
すると、
「ちゃんと
起こしてくれておりこうさんでしたね」
寝起きまる出しの声で
そんな事を言いやがる。
俺様相手におりこうさんと来たか。
「はは!そのおりこうさんにご褒美は?」
「ん…」
睦は俺と同じように
手を伸ばして頭を撫でてくれた。
「褒美にしちゃ弱ぇなぁ?」
「んー、」
起きるのは苦手か。
いつものハキハキした様子はカケラもなく
のっそりとした動きで
俺の頬に唇を充てた。