第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
任務は難なく遂行する事ができ
約束通り、愛しい女へと続く
帰路を辿る。
月は既に西の空に差し掛かっていた。
でもまだ空が白んでいるわけではない。
この分だと夜明け前には戻れそうだ。
大した怪我もなく
これなら手当てをさせる心配もなく
無事睦の元へと帰れそうだ。
道なき道を行きながら
俺は自分の手を握って、開いて
それを数回繰り返す。
あいつの手はもう元には戻らねぇと
どの折に伝えようか。
もちろん焦って教える事もない。
でも先に伸ばせば伸ばすだけ
負う傷が深くなるような気がして。
俺のこの手と交換してやれたら
どれだけいいだろう…
まぁあいつは
そんなこと望まねぇだろうけど。
しばらく行くと
さっき抜けた草原が見えてきた。
その先には立派な洋館。
睦は眠っているだろうか
高い門を飛び越え
さっき出て行った2階の窓目掛けて
屋根へと飛び乗った。
中は薄暗い。
小さなランプが部屋を照らしているようだ。
観音開きになる窓の枠に指をかけクッと引くと
カタンと音を立てて簡単に開いた。
俺のためなのか鍵はかけなかったらしい。
ここから来る事はお見通しだったワケだ。
中へと入り
元通り窓を閉め
顔だけで部屋の中を見渡した。
するとその片隅に置かれた大きなベッドの上に
寝転ぶ睦の姿が目に入る。
こっちを向いて横臥し
自分の両手を枕にして眠っていた。
ベッドの縁に座ったまま寝転んだような格好だ。
本当なら
寝ずに待っていたかったヤツかな。
…そうだったらいいのにな、
なんてなー。
起こさないよう
足を忍ばせ睦に歩み寄る。
床に腰を下ろし
睦の寝顔を眺めた。
頬にかかる髪を払い
親指の腹で紅色に染まる唇をなぞる。
これはもう、俺のモノって事でいいのかな
だったらいいな…
目を覚ます気配はなかった。
よほど疲れているのかぐっすりだ。