第10章 知己朋友【ちきほうゆう】
「あはは大丈夫ですー。
仲良しのお2人を見ることができて
幸せだったので…でも淋しかった」
「一緒にいるのに
淋しいなんてツラかったなぁ?」
大げさに言ってくる宇髄さんは
頬を擦り付けてくる。
…酔っている。
でも私も酔っているし煉獄さんも同じだ。
こうなると止める人間は誰もいない。
「宇髄さんダメよ?
今度は煉獄さんが淋しくなっちゃうでしょう?」
「煉獄、淋しいか?」
「淋しくはない!
でも放っとかれるのは好きではない!」
「ホラ、淋しいって」
「いや、今淋しくねぇっつったろ」
「淋しくはない!
でも放っとかれるのは好きではない!」
「もうさっき聞いたわ。何で2回言った」
3人で酔っ払いの会話をする。
私は宇髄さんの手の熱さを
不思議に思い、彼の頬に触れてみた。
「……」
次に煉獄さんの頬にも
振り返って触れる。
「何してる睦。煉獄に触るな」
ぐいと手を引き戻される。
「どうして、2人ともそんなに熱いの?
私さむい…」
自分の両腕を抱いた。
「確かにお前の手、冷てぇな。
酒飲んで冷えるなんて事あんのか?」
「寒いのか!それはいかん!」
私の背中から、煉獄さんが私のお腹に手を回す。
「おい煉獄!てめぇケンカ売ってんのか!」
そう言って宇髄さんが前から
私の頭を抱いた。
「いや!ケンカなど売らないぞ!」
「そこじゃねぇ!睦を離せ!」
「あったかい…このまま寝る…」
一番心地よい状態になった私は、
そのまま横になろうとするが、
屈強な2人に抱えられているせいで
どうしても寝転べない。
「寝るぅ!」
私が言うと
「…俺は帰らせてもらおう!」
私と寝るのが嫌だったのか、
宇髄さんに遠慮したのか、
何の脈絡もないのに急に帰ると言い出した。
「いや、もう遅ぇぞ。
今日のところは泊まってけ」
「だがそれでは迷惑…」
「このまま寝たいーっ!」
私が2人の会話を遮ると、押し黙った。
そして、私ごと、
ぱたりと体を横たえた。
願いの叶った私は満足で、
瞼は縫い付けたかのように、
ぴったりと閉じられた。