第10章 知己朋友【ちきほうゆう】
「…はぁい」
私はしゅんとしてグラスを置いた。
それを横からスッと抜き取り
電気にかかげると
「何とも美しい色の酒だな」
私の手に握らせてくれるのは煉獄さん。
…人のことは言えないけれど、
煉獄さんもだいぶ酔っているみたいだ。
「ワインて言うんですって。
お茶と間違えて飲んでしまった事があって。
でもとってもおいしかったんです。
そしたらね、
宇髄さんが買ってくれてあったんですよー。
素敵でしょう?」
私はもう宙に浮いてるみたいにふわふわだ。
「宇髄は睦が可愛くて仕方ないのだな」
煉獄さんこそ嬉しそうに言うので
私は少し驚いた。
何とは無しに呆けてしまった。
「そうなんだよ。この可愛さたまんねぇだろ」
宇髄さんにくいっと顎を掬われる。
「確かに器量良しだな!」
「これが顔だけじゃなく体つきも最高なのよ」
……何と。
「そうなのか!」
………。
「甘露寺なんか目じゃねぇよ」
「それはすごいな」
……女子会ならぬ男子会?
いや、本人の目の前で話す事じゃないよ。
「しかも見てくれだけじゃなく性格もな…」
そんな事を
ツラツラと語り続ける彼の声を追いながら
あぁ、珍しく宇髄さんも酔ってるんだなぁ、
なんて考える。
気心の知れた相手と一緒にお酒を飲めて
いつもより嬉しそうだ。
大切な人が嬉しそうだと、私も嬉しい。
男子会を繰り広げる2人は
私で遊んでいるが
そんな事は気にならないほど幸せだった。
宇髄さんも煉獄さんもハイペースで飲み続けていて
もう私がどれだけ飲んだかなんて
まったく気にしていない。
それをいい事に、私はビンを殆ど空けた。
男性陣とは比べ物にならないほど
小さなビンだけど。
それでも私、もうくらくらだ。
首に力が入らなくて、頭が揺れる。
それをきゅっと引き寄せられる。
「ぶっ倒れそうだな…睦」
「宇髄さん、」
思い切り寄りかかる私を抱きとめる腕が熱い。
「お話し、終わった?」
「お話し?」
「煉獄さんとずっと話してるから」
ちょっとだけ淋しかった私は
やっと相手をしてもらえて嬉しかった。
「睦、淋しかったか!
宇髄を君から取り上げてしまった。
申し訳なかった!」
煉獄さんが横から声を張る。