第10章 知己朋友【ちきほうゆう】
何でしょうね。
この2人の笑顔は眩しすぎ…。
私は平常心を装って
「ありがとうございます。
楽しみにしてます」
澄まして笑って見せた。
…内心ばっくばく。
きっと宇髄さんにはバレてるの…
それでも、それを隠すように
再び台所へと小走りでむかうのだった。
大掃除は無事終わり。
2人は汗も流し、
今はもう、ほろよい機嫌だ。
最初こそ、お酒の補充や肴の追加など
忙しくしていた私だったが、
そろそろ落ち着けと宇髄さんに言われ
僭越ながら同じテーブルについた。
この2人、本当に仲が良くて、話しもよく弾む。
テーブルを挟み
向かい合って座る2人の間にいる私は
右から煉獄さん、左から宇髄さんの声を聞いて
とっても満足。
私にはよくわからない難しい話しをしている様子。
会話に加われなくても、
聞いているだけでとってもいい心地。
それは私に
お酒が入っているからという事もあるんだろう。
いつもより上機嫌なのが自分にもわかる。
これ以上飲んだら
酔っ払ってしまうのはわかっているのに、
やめられない。
まだお正月でもないのに、
こんな事してていいのかなぁ…。
1人ふわふわしている私に気づいた宇髄さんが
グラスを取り上げた。
「睦、飲み過ぎだ」
片肘をついて私を軽く睨む彼は
顔色ひとつ変わっていない。
「…そうですよね…
でもお2人がいてくれると安心するというか…
おいしくて…」
ヘラッと笑って
やらかしてしまった自分をごまかした。
「好きなだけ飲むといい!」
片や、頬を朱に染めている煉獄さんは、
宇髄さんからグラスを取り上げ
私に返してくれる。
受け取った私は、許可を頂いたので、
それをまた口に含んだ。
「あー!煉獄お前、こいつ潰す気か!
めちゃくちゃ弱ぇんだぞ!」
宇髄さんが抗議する。
でも煉獄さんはのんきに
「いいじゃないか。
こんなに幸せそうにしているんだ」
私の頭を撫でてくれる。
自分が思っていたより酔いが回っていたようで
その手を勘違いして擦り寄ってしまう。
そしてまた一口、飲もうとして
「やーめとけって」
グラスの口を大きな手で塞がれた。