第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
結局、鬼は仕留められず、
そのまま取り逃してしまった。
俺の初任務は失敗だ。
俺は、この少女を助けたのではない。
この少女から、両親を奪ってしまったのだ。
しばらくすると何人もの隠が来て、
部屋の片付けを始めた。
少女の母親と思われる女は
キレイに食われてしまっていた。
父親の方は、ほぼ食われておらず
苦しんで死んでいったのだろう、
目を剥いていた…
気を失った少女の方も
多少の怪我を負っていたらしく、
脚から血を流していた。
幸い重症というワケでもなかったため
近所の医者に預けられたとの事だった。
どうしようか悩んだが、
数日後、俺はその医者の元を訪ねた。
入院もできるその病院は小綺麗で
好感の持てる場所だった。
覚悟を決めて行ったものの、
少女は既に退院した後だった。
情けない事に、ホッとしている自分がいた。
どう詫びても
詫びきれねぇ事がわかっていたから。
どのツラ下げて見舞いに行けんだよって
思っていたのだ。
会いに行ったくせに
会えずに終わって安堵していた。
でもその時に、
あの少女の家族とも交流があったという
その医者から、少女の名を聞いた。
その名を、きっと一生忘れねぇと思った…。
俺はその失敗を糧にのし上がる。
同じ過ちは繰り返さないよう、
犯した罪を、力に変えて…。
櫻井が鬼の首を落とし、
程なくして、その体は灰となって消えた。
その瞬間を、こいつの代わりに目に焼き付けた。
症状から見て、
ほぼ間違いなく毒にやられている。
俺の仕事はこれからだ。
取り急ぎ、解毒薬を口に含ませる。
だが意識もなく力も入らない櫻井が
それを飲み込める筈もなかった。
口端から流れ出た薬液を
指先で口内に押し戻し、
少しでも体内へと流し込ませる。
そうして小さな身体を抱え上げ
一路、俺の屋敷へ…。