第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
無数の斬撃を背中に受け
怒気を高めた鬼が、
「ぐぁああっ」
振り向き様に私へ向けて釜を振り切った。
…どうやら言葉を持たないらしい。
それは少し残念だ。
こいつに命乞いをされてみたかった。
ブンッと空気を切り裂く音と共に襲う旋風が
私を散らそうとするけれど
この小さな身体は当たる面積を最小限に抑え
それをうまくやり過ごす。
小柄である事に劣等意識を持っていたけれど
こんな時ばかりは役に立つ。
履いていた下駄を脱ぎ
ジャリッと地面に素足で降りた。
指先でばらばらと小石を慣らして
踏み込む準備をしていると
怒りの収まらない異形が再び鎌を振り上げる。
異形の間合に入り込むつもりで
前方へ飛び出そうとしていた体勢を立て直し
深く踏ん張ると
ものすごい速さで私を切りつけようとする
鋭い刃を刀で受けた。
グッと地面に押しつけられるような重圧。
なんて力だ。
刀を両手で支えて必死に耐える。
これを押し退けなければ
次の攻撃は繰り出せない。
その前に…
思った通り、ヤツのもう一方の腕が
垂直に飛んで来た。
私の背中ないし腰を狙っての一撃。
私は膝の力を一瞬だけ抜いて身を屈ませた。
ヤツの重量を受け入れてから、
隙をつきグイッと押し上げて踏ん張ると
飛び来る腕の肘窩あたりを
振り上げた左足の裏で堰き止める。
こうなると、
片脚だけで自分を支えるのが難しい。
だがありがたい事に、
私の方が下にいるのだ。
理想的な格好…
膝を伸ばし切り、
堰き止めた腕を弾き飛ばす。
受けていた鎌も力の限りに押し上げて
互いの刃に隙間を作った。
そこを狙っての
『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷』
突然の衝撃波に不意をつかれたのか
鬼は宙にぶわっと吹き飛んだ。
地面を蹴りそれを追った瞬間、
振り下ろされた鎌の先が
私の腕を掠めていった。
途端に吹き出す血液。
掠める程度だったはずなのに
どくどくと流れ出す。
構わずに飛びかかり浴びせるは
『雷の呼吸 弐ノ型 稲魂』