第10章 知己朋友【ちきほうゆう】
私の予想は半分当たっていて
半分はずれていた。
私たちがお屋敷に着くと
門の外を箒ではいていた雛鶴さんも
門の内側の雑草を抜いていたまきをさんも
「おかえりなさい」とあいさつしてくれたが
どこか呆けていた。
そして、玄関で出迎えてくれたのは、
たまたまその近くにいた宇髄さん。
須磨さんが先頭を切って中に入ると、
「おー須磨、帰ったか。
お前また、まきをに叱られたって?…あれ」
楽しそうに声をかけた。
須磨さんに手を引かれたまま、
続いて顔を見せた私を見つけると
「睦!来たのかお前。
俺からの贈り物は気に入ったか?
足りなきゃもっと……オイ」
ぎゅうっと抱擁し、
最後にそこに姿を現した煉獄さんに
「煉獄じゃねぇか。何でいるんだどうした」
きょとんとして声をかけた。
おもしろいほど異なった対応。
「ただいま帰りました、天元様。
任務完了です!しかも睦さんという
お土産付きです。お手柄ですよね⁉︎
さっきの失敗、帳消しにして下さい」
「…ちょっと須磨さん、話が違います!」
まきをさんが怒ってて帰りにくいって言ってたのに
そうじゃなくて、失敗を帳消しにする為の
宇髄さんへの賄賂か!
私を何だと思っているんだ。
「よしよし。まきをには言っといてやるよ」
「わーい!今言って下さい、今!」
「須磨さん!」
「睦さん、違いますよ、
私ほんとに睦さんのこと大好きなんです!
たまたまです!だって実際ほら、
天元様も喜んでらっしゃいますし!
相互利益ってやつですよ」
ん?
そう?
…いや、でもやっぱり私、使われた気がする。
「ごゆっくり!」
たたっと姿を消す須磨さんに
ギモンは拭えないまま。
「睦よく来たな」
甘い声で頬を擦り寄せる。
「…ほぅ、宇髄と睦はそういう関係なのか?」
急に、背後から問われて、
人前である事を思い出し慌てて離れようとする。
でも力いっぱい抱き込まれてしまい
寸分たりとも離れられない。
「そうだ。睦は俺のだ。
……そういや煉獄、
昨日は俺の睦が世話になったようで…
ありがとな」
「あぁ!君の睦を世話したが
気にするな!」
変な会話を聞きながら、私はただ抱擁されていた。
何もかもがおかしい。