第10章 知己朋友【ちきほうゆう】
「はい!」
私たちの会話を聞いていた須磨さんは、
「あれぇ?
睦さん、煉獄様とお知り合いですか?」
不思議そうに訊いた。
「昨日、私が困っている所を
助けて頂いたばかりなんです」
「そうなんですかぁ。さすが煉獄様です」
すると今度は、それを見た煉獄さんが
「君たちは随分と仲がいいんだな!」
にこにこと言った。
「はい!仲良しなんです」
つないだ手を嬉しそうにぶんぶんと振る須磨さん。
…そんなに振り幅が大きいから、
穴を開けたり壊したするんじゃないかしら…。
「これから天元様のお屋敷に帰る所なんですよ」
「そうか!気をつけて行くといい!」
2人がそんな会話をし始めたので、
私は「良いお年を…」と
ご挨拶するつもりでいたのに、
「煉獄様も一緒にどうですか?」
なんて、まるで友達を誘うような台詞を
須磨さんは言ったのだ。
「えぇ⁉︎須磨さん!
この時期にそんな…
煉獄さんだってお忙しいでしょうし…」
私が慌てると、
「あ、そうか…。申し訳ありません…」
須磨さんはハッと気づいて頭を下げる。
「いや、せっかくのお誘いだ。伺おう!」
「ええ‼︎」
来るの⁉︎…とまで言うのは
すんでの所で堪えたが…
何だこの人たちは。
今日が師走の28日と
わかって言っているのだろうか。
忙しいよね。
私、須磨さんの為にがんばって時間を割いてるけど
やることはまだまだあるよ?
だいたい、
迎える側だって大掃除の仕上げしてるんでしょうに。
須磨さん自身がそう言っていたばかりなのに。
こんな年末にお客様を連れて行くなんて
絶対にありえないと思う…。
「本当ですか⁉︎嬉しいです!
天元様も喜ばれます!」
うかれて天にも昇ってしまいそうな須磨さんは
満面の笑みで先に歩き出す。
手をつないでいた私は
それに引っ張られる形で歩き出す。
その後を、昨日と同じく、
颯爽とついてくる煉獄さん。
おかしな行列は、楽しい会話のもと進んでいく。
一路、宇髄邸に向かって…。