第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「こら、力抜け。寝る時みたいにしてろ」
「んー……?」
「くくっ、口は開いてもいいんだよ」
…笑われた。
でも、
それは
音柱サマの言う通り……
口は開いても問題はないのだ。
「ほらココ、」
私の眉間をほぐすみたいに
触れた指1本がぐりぐりと円を描いた。
力を抜けと言っているのだ。
「はぁい…」
力を抜く。
力を抜く…
力を、抜く?
どうやったら力が抜けるのか…
この緊張がある限り
抜けないような気がする。
「……もういいわ」
いつまでも
硬い表情を保つ私を諦めた音柱サマは
そこから指先を眉に沿って滑らせ、
そのまま輪郭を撫で下ろし顎を支えると
「今度は、おしゃべり禁止な」
軽く掴んで固定した。
…まずい。
これはさっきのよりも緊張します!
ていうか、触り方がいちいち
いやらしい気がするんだけど。
考えすぎかな…
「お前なぁ…」
呆れ切った声がして
そろりと片目を開けてみる。
すると声よりももっと呆れた目が
私を見下ろしているではないか。
「そんな噛みしめてて
紅が塗れると思うか?
力を抜けって!言ってんだろ!」
イラついたような声とは裏腹に
大きな掌で優しく頬を包まれて
図らずもどきりと胸を鳴らし、
更に肩に力を入れてしまう。
それを見た音柱サマは
はぁあ、と大きなため息をつき、
顎を支えていた手で
背中をさすってくれた。
「まぁ…今まで散々なコト言ってきたしなぁ。
俺のことキラいなのはわかるが
任務の為だと思って耐えろよな…?」
そのうちトントンと、
まるで赤子を寝かしつけるような動きに変わり
ようやく全身が緩んで…
…あぁ、この緊張は、
私がこの人を嫌いだったからなのか。
帰れとか辞めろとか
お前はダメだとかまだ居たのかとか、
顔を合わせる度に
何かしら辛口な言葉を投げつけられた。
そうか、
違う意味での緊張だとばかり思っていた…
あんなふうに、冷たい言葉を浴びせられて
悲しかったし悔しかった。
それでも恋柱様の言葉の方を
無理やり頭に叩き込んで
私は踏ん張ってきたけれど、
やっぱりこの人にも
認めてもらいたかった。