第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「はい、」
緩くもなければキツくもない。
絶妙な具合だ。
「上手なんですね…」
着付けてやるって
自分から言い出しただけの事はある。
「脱がす方が上手いけどな」
「なんか言われましたか」
「化粧する方が上手いけどな!」
「へぇ」
「ほら」
音柱サマは
自分が座る目の前に置いた座布団を
ポンとひと叩きし
ここに座れと暗に言った。
お化粧か…
そんなの、鬼殺隊に入る前に
紅を引いたことがある程度だ。
だからちょっと怖かった。
そんな事をしていいのかどうか。
似合うのか、どうか。
もし施してもらって
似合わないって笑われたらどうしよう。
本当に男の子だったら
ただの笑い話で終わるのかもしれない。
だけど私の場合、シャレにならない…
「なんだ、大丈夫だよ。
おかめにはしねぇし
ちゃんと綺麗にしてやるから来い」
不安が顔に出ていたのか、
音柱サマは困ったように眉を下げ
私を手招いた。
おずおずと1歩ずつ近づくのを
我慢強く待ってくれ、
ようやくそこに座った私に
「お前は元がいいから
ちゃんと化けるだろ。
俺も綺麗にし甲斐があるってモンだ」
優しく微笑んで見せる。
…
さっきから。
おかしいな…
勘違いかな。
私の扱いが、
いつもと違いすぎないだろうか…?
着物を先に着せてもらったために、
手拭いを襟元に挟んで
汚れないようにしてから始める辺り
実は細やかな心遣いが見える。
「目ぇ閉じてな」
白粉をはたいた後、
箱をがさごそやりながら
音柱サマは私に言った。
素直に言うことを聞き目を閉じると
しばらくした後、
瞼に柔らかいものが触れ
スッと目尻に向かって引かれる。
トントンと軽く叩くように動いて…
そわそわする。
自分の顔がどうなっているのか気にもなるし
向こうは見ているのに
私には見えていないというのも
どうにも落ち着かない。