第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
ずっとこんな格好を
人前に曝すなんて耐えられない。
涙目になった私を見て
さすがの音柱サマも哀れに思ってくれたのか
「…だよな、」
すんなり理解を示してくれた。
「んじゃ、…順番は違うが
まぁそこは気ィつけるとして先に…、」
立ち上がった音柱サマの手には
白色と空色のぼかしが綺麗な……
…アレを、私が着るのかな…
ちょっとどきどきしていると
私の視界を塞ぐように正面に立ち
バサっと着物を捌いて
背中から肩に掛けられた。
「…きれい、」
足元までストンと落ちた着物を見下ろして
つい呟いた私に、
「こら、袖通せ」
音柱サマは
私の頭のてっぺんに声を落とす。
「あ、…はい」
そりゃそうか。
私は袂をつまみながら袖を通した。
腕を少し揺すって馴染ませるのは
ズボラな私のクセかなぁ?
私が両腕を自然に下ろしたのを見届けて
音柱サマは
先に長襦袢の衣紋(えもん)を抜いた。
左右の襟を合わせ、背中心を決めてから
前幅を見ている時……
「お前…腰ほっそ…」
「え…ッ」
音柱サマは着物から手を離し
私の腰を測るように両手で掴んだ。
「ひやぁ…っ」
不意に触られた驚きと
くすぐったかったのとで
私はヘンな声を上げてしまい、
慌てて両手で口を塞ぐ。
「ダメだこりゃ。手拭いでも巻くか…」
私の反応なんか無かったかのように
音柱サマは小さく舌打ちをして
帯の横、畳の上にたたんであった手拭いを手に
再び私の前へ…
今度はそこに膝を突いた。
まだ引っ掛けただけの着物を避け、
腰に抱きつくようにして
私の背中に両腕を回す。
「……」
不整脈みたいだ。
こんなどきどきするのは、
久しぶりに、可愛い格好ができるから。
それと、……。
それと。
…なに?
いつもみたいに、
楽しくお話しとか
作戦会議とか、
技や戦い方を論じ合ったり…
そうじゃなくて、
静かに、閑かに
こんなふうに男の人のそばにいるのは
ほぼ初めてのことだから
しかもこんな間近で。