第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
音柱サマの背中から
じっと目を離さないまま
ベルトを解いて隊服を脱いでいく。
静寂の中に、
衣擦れの音だけが響いて…
別にお喋りはしててくれても構わないのに…
と、そんな事を考えつつ。
背を向けているとは言え、
すぐそこに男の人がいるのかと思うと
心臓が早鐘を打って仕方がない。
ふと振り返られたら終わりなのだ。
何をしているんだ私は…
何でこんな事に…?
「櫻井」
不意に名を呼ばれハッと手を止める。
「なん…っですか」
驚きの声を上げると
「…そんな緊張すんなよ」
ぷっと小さく笑って見せた。
…笑った。
いや、
笑われた?
どちらにせよ、
私の緊張はほんの少しだけ和らいだ。
「ごめんなさい…」
「いや。…今日の任務なぁ。
それなりに覚悟しとけ」
「え……そんなに、ですか?」
手強いって?
「いや、強さではお前が上だろうけどな」
項垂れ気味の音柱サマの背中を見遣り
私は言葉の真意を探す。
私の方が勝るのに、
なんの覚悟がいるのだろう。
いや、そりゃあ私だってね、
「常に気を引き締めて任務にあたっています。
敵に弱いも強いもありません。
どんな相手だとしても
油断した事なんかありません」
「あぁ…そうだろうな。
そうやってお前は、強くなってきたんだから」
……?
なんか変だな。
違和感が残る…
静かさに気を取られることはなくなったが
今度は違う所に引っ掛かりを覚えた。
でも、
とりあえずは着替えだ。
薄布に袖を通す。
ひんやりとした感触が身体を包み、
ほどなくして私の体温が移って行った。
薄桃色の腰紐を巻いて、
襟元から合わせを整え、裾を払ってから
「…お待たせしました」
こんな格好でどうしたらいいかわからず
私は俯いた。
見せた事のない姿を見せるのが恥ずかしい。
「……あー、先に化粧?」
音柱サマが
言いにくそうに私を窺って…
「えぇえ…っ⁉︎ずっとこの格好なんですか⁉︎」
思わず自分の身体を抱きしめる。